東日本大震災直後に起きた福島第一原子力発電所の事故で、原発周辺地域の住民は放射性物質による大気、水、土壌の汚染、それに伴う内部被ばく、長期的な発がんリスクの恐怖に直面した。しかし、計測結果に基づく内部被ばくの実態はこれまで明らかではなかった。南相馬市立総合病院(福島県)の非常勤医でもある東京大学医科学研究所の坪倉正治氏(血液内科)は、市内の一部が福島第一原発から半径20キロ圏内に入る南相馬市の住人を調査した結果、「被ばく線量レベルは成人も子供もほとんどが低く、セシウム除去剤の使用対象となる値を示したケースはなかった」と、8月15日発行の米医学誌「JAMA」(2012; 308: 669-670)に報告した。ただし、長期的な評価はこれからの課題だという。