抗がん薬や放射線治療などによって味の感じ方が変わることがあり,そのために食欲をなくしてしまう場合も多くあります。舌の表面には,味を感じる「味蕾」がありますが,抗がん薬は味蕾の新陳代謝を阻害したり,舌神経や舌咽神経などに障害を与えたりするため,味覚の変化が起こりやすいと考えられています。そのほか,唾液の分泌の低下や粘膜の荒れなども影響します。 何を食べてもおいしくない,砂をかんでいるようだ,味を感じない,苦みが強い,甘ったるい,味を強く感じるなどいろいろな症状を訴える人がいます。味覚の症状に合わせた食事の工夫をしましょう。 (1)味を感じにくい場合:味付けをはっきりさせます。例えば煮物などは普段より塩分を濃いめにしたり,酸味を利かせたり,香辛料(カレー粉,ショウガ,からし,唐辛子など)や香味野菜(シソの葉,ミョウガ,木の芽,ミツバなど)を使って調理します。ただし高血圧や血糖値の高い人は,いつも濃い味付けにすることは注意しましょう。うま味(かつおだし,昆布,干し貝柱,アサリなど)やこく(バターや生クリーム,牛乳などを使う)のあるもので塩分が過剰にならないようにしましょう。 (2)いつもの味と異なって感じる場合:いろいろな味付けを試してみましょう。あく抜きや臭み抜きをしっかりします。例えば,魚の場合は酒を振って臭みを取ってからカレー粉を付ける,ごまをまぶすなどし,また食べるときに好みの味を付けるようにします。浸し物もゆでてあく抜きをしてから食べるときに味を付けるようにしましょう。 (3)味を強く感じる場合:強く感じる味の調味料,素材の利用を避けます。例えば,塩味を強く感じる場合は魚や肉は下味を付けないで焼き,レモンやユズなどで食べます。味噌汁や澄まし汁はだしを利かせて味付けを薄くします。あえ物も同様にだしを利かせて,だしじょうゆを別添えします。 (4)口腔内が乾燥している場合:特に高齢の人は唾液の分泌が減って口の中が乾きやすくなります。焼き物やフライなどは食べにくいので控えます。汁物やお茶を取りながら食べるようにしましょう。