肝硬変は肝炎や薬物中毒などによって肝臓が侵され,これが数年から数十年を経て,肝細胞が壊死,線維化し,肝機能が著しく低下する疾患です。肝硬変の食事は,肝臓の侵された程度によって大きく異なります。 代償性の場合,自覚症状は少なく,食欲もあり,肝臓で侵された部分の働きがほかの部分で代償されているので,十分な栄養を取ることが大切になります。食事療法は慢性肝炎に準じます。 非代償性の場合は,食欲不振が強く,栄養のある食品を与えても十分代謝されないので,できるだけ必要量に近付けるように,患者さんの嗜好を取り入れるようにします。香辛料や香味野菜,酸味のあるものなどで食欲アップの工夫をしましょう。 症状が進むと,大きく分けて4つの副作用が起きます。(1)黄疸が出ているときは脂肪制限(20~30g/日),消化吸収のよいものを取ります。(2)腹水や浮腫のあるときは塩分(浮腫の程度によって3~6g/日)や水分を制限します。(3)食道静脈瘤がある場合は軟菜食にし,硬いものや,角のあるもの(あられ,せんべい,フランスパン,干物,かりんとうなど)は避けます。(4)肝性昏睡の危険があるときは蛋白質を制限(0.5g/体重kg以下)します。昏睡に陥った場合の栄養は輸液や栄養剤で補給します。 また肝臓病の食事療法では,便秘予防に配慮し,食物繊維(未精白の穀類,野菜,海藻,キノコ,豆類,果物など)を多く摂取できるよう献立も工夫しましょう。