後天性の血栓性血小板減少性紫斑病―血液難病に新薬 参考になった 名の医師が参考になったと回答 記事をクリップ 記事をクリップして、あとでマイページから読むことができます Facebookでシェアする Xでシェアする Lineでシェアする © Adobe Stock ※画像はイメージです 国の指定難病「血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)」のうち後天性のものは、免疫系の異常によって全身の細い血管に血栓がたくさんできる血液疾患だ。 急性期の死亡率が高い病気だが、2022年12月に新薬が登場し、30年ぶりに治療が大きく進歩した。血液疾患に詳しい埼玉医科大学病院血液内科の宮川義隆教授に、後天性TTPの症例や治療などについて聞いた。 ▽脳梗塞で救急搬送 出血したときの止血に重要な働きを担うタンパク質「フォン・ヴィレブランド因子(VWF)」は、長い鎖のような形をしており、血液成分の一つである血小板とくっつきやすい性質を持っている。正常な血管内では、VWFはADAMTS13と呼ばれる酵素によって短く切断されて必要以上に血栓ができないような仕組みになっている。 しかし、後天性TTPでは、免疫系のバランスが崩れてADAMTS13を攻撃する自己抗体をつくるためADAMTS13の働きが弱まり血栓ができやすくなる。 宮川教授によると、TTPには遺伝子異常による先天性もあるが、95%は後天性だ。後天性TTPの発症率は年間100万人あたり約4人で、中年以降に発症する傾向が強く、女性のほうが多いという。 後天性TTPを発症すると、脳梗塞による意識障害、手足のまひ、血小板減少による紫色のあざ、黄疸(おうだん)などさまざまな症状が表れる。患者の多くは、一過性の脳虚血発作で救急搬送され、判明するという。 意識障害やまひなどは脳梗塞を思わせる症状だが、検査をすると血小板減少、溶血性貧血といった所見が見られる。宮川教授は「後天性TTPは珍しい病気であり、専門医も少なく、この病気を早期に診断するのは難しい」と指摘した上で、「TTPの可能性がある場合は、血液内科を受診することをお勧めします」と話す。 遺伝子異常による先天性TTPと、免疫異常による後天性TTPの症状など ▽カプラシズマブを併用 後天性TTPは治療しないと2週間以内に約9割が血栓症で死亡すると言われ、治療は急を要する。血漿(けっしょう)交換と免疫抑制薬が現時点で最も推奨される標準治療となっているが、近年は、抗体医薬のリツキシマブで自己抗体の産生を抑える治療も有効とされる。 昨年12月に新たに発売された抗体医薬のカプラシズマブは、VWFに作用して血栓の形成を妨げる効果がある。海外の臨床試験で、標準治療とカプラシズマブの併用で血小板数がより早く正常化し、血漿交換の回数も減り、死亡率も低下することが分かった。 「後天性TTPは健康な人でも突然かかる病気ですが、早期診断、早期治療で治癒が期待できます。専門医の下で救命できれば、社会復帰も可能です」と宮川教授は話している。 (メディカルトリビューン=時事) ◇ ◇ 埼玉医科大学病院の所在地 〒350―0495 埼玉県毛呂山町毛呂本郷38。電話049(276)1111(代) 参考になった 名の医師が参考になったと回答 記事をクリップ 記事をクリップして、あとでマイページから読むことができます Facebookでシェアする Xでシェアする Lineでシェアする ×