日暮れが早くなる秋から冬にかけて気分が落ち込み、春ごろになると軽快する「冬季うつ」。日照時間と大きな関わりがあるとされるが、別の病気が関連しているケースもあるという。田町三田こころみクリニック(東京都港区)の大沢亮太理事長は「自己判断せず、医療機関を受診して診断を受けてください」と話す。 ▽一般的なうつ病と違う 冬季うつは「季節型うつ病」や「季節性感情障害」とも呼ばれる。「気分の落ち込みや倦怠(けんたい)感などに加え、冬季うつの症状は、いくら寝ても眠い、食欲が増し、特に甘いものや炭水化物が食べたくなるといったことで、一般的なうつ病の食欲減退、眠れない、体重減少などとは異なるのが特徴です」と説明する。 女性に多い傾向があり、20歳代から症状を訴える人も珍しくない。子どもの発症もなくはないが、成長過程にあるため見極めは難しいという。 原因の一つに、日照時間と体内のメラトニンの分泌が関係していると言われている。メラトニンは、脳内の松果体(しょうかたい)という器官から分泌されるホルモンで、目から入ってきた光の刺激で昼間は抑制され、夜になると分泌が促進されて眠りを促す。つまり、覚醒と睡眠を切り替えて1日の体内リズムを調節している。 日照時間が短くなるとこのリズムがずれやすく、また、夜が長いと日ごろのストレスが心理的な影響を及ぼしやすいという。さらに、女性は月経周期の影響もあると考えられている。 ▽太陽光でリズム 冬季うつの治療で大切なのは午前中に太陽光を浴び、光を目の中の網膜に届けることだ。その刺激がメラトニンの分泌を促し、体内リズムのずれをリセットさせる。同時に、規則正しい起床や就寝、食事などで、1日の生活リズムをつくっていくことも重要だ。 なお、薬物療法が行われる場合もあり、同院では抗うつ薬から開始するケースが多い。ただし、冬季うつは、双極性障害を併発している例が少なくない。「双極性障害のうつ状態が、冬季うつの症状に見える人もいます」。そのため治療経過を見ながら、他の病気を見逃さないように意識しているという。 「寒い季節に体調不良を感じる人は少なくありません。生活に支障が出ていたら、一度、心療内科や精神科の専門医を受診してください」と大沢理事長は呼び掛けている。(メディカルトリビューン=時事) ◇ ◇ 田町三田こころみクリニックの所在地 〒108―0023 東京都港区芝浦3の13の1 矢島ビル501 電話03(6435)1553