つわりの予防と対処法―我慢せず相談を

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 吐き気、嘔吐(おうと)、食欲不振、眠気など、多くの妊婦が経験するつわり。妊娠5週頃から始まり、10~12週頃に落ち着いてその後徐々に自然消失する場合が多く、「我慢するもの」と考える人も少なくない。一方、「重篤な合併症が起こり得る極めて強い吐き気や嘔吐は治療が必要です」と宮の沢スマイルレディースクリニック(札幌市)の馬場敦志院長は指摘する。

▽妊娠悪阻は要治療

 つわりは個人差が大きい。「ほとんど症状がない人もいれば、味覚の変化、空腹時の吐き気による過食、偏食、なんとなく具合が悪いなど、不快な症状が妊娠中ずっと続く人もいます」

 つわりが重症化して食事や水分が十分取れず、全身状態が悪くなる妊娠悪阻(おそ)を発症する妊婦もいる。一般的なつわりと異なり、嘔吐の回数が多く吐き気も激しいため、体重減少や脱水を起こしやすい。脱水の影響で血管の中に血の塊ができる血栓症には特に注意が必要だ。「血栓予防のためにも、ストレッチやウオーキングなど、体調が良い時間帯に軽い運動を行うのもよいでしょう」

 つわりによる体重減少が妊娠前の5%以上になると、妊娠悪阻の可能性が高い。体重変化や尿検査などで診断を受け、食事や水分が全く取れない場合は点滴治療が行われる。入院が必要なケースもある。「適切な治療を受けないと、脳や肝臓に障害を引き起こす重篤な合併症が生じる例もあります。気になる症状があれば、早めにかかりつけ医に相談してください」

▽つらいときは薬も有効

 つわりはホルモンバランスや環境の変化、心理的ストレスなどが原因と考えられていたが、昨年12月に英国のケンブリッジ大などの研究グループが、胎児から胎盤を通じて母体に送られる特定のホルモン(GDF15)が、つわりの吐き気に関連しているとの研究結果を発表した。

 「脳に作用し吐き気を引き起こすこのホルモンに、母親がどれだけ敏感かが、つわりの重症度に関係すると示した点が画期的です。今後、妊娠悪阻の予防や新たな治療薬の開発につながると注目されています」

 つわりは一日のうちでも波がある。「吐き気がつらい時は我慢せず、必要な薬は使いましょう」。ビタミンB6にはつわりの症状を和らげる効果があり、妊娠中も安全に使用できる吐き気止め薬もある。食事は好きなものを食べたい時に取り、脱水予防にスポーツドリンクを飲むのもお勧めだ。

 「不安は一人で抱え込まず、医師の他、パートナーや家族に相談を。周りも優しく支えてあげてください」と馬場院長は助言する。(メディカルトリビューン=時事)

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 宮の沢スマイルレディースクリニックの所在地 〒063―0061 札幌市西区西町北20の2の12 SR宮の沢メディカル2ビル2階 電話011(590)1213

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