脂肪性肝疾患、超音波で評価―生活習慣病関連が増加

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 肥満や2型糖尿病などの生活習慣病に関連して発症する脂肪性肝疾患が増加している。進行すると肝硬変、肝細胞がんなどの重い肝臓病や脳卒中などの心血管疾患を引き起こし、命に関わることもある。横浜市立大学付属病院(同市)肝胆膵消化器病学の米田正人准教授に、原因や予後(病状の見通し)の検査法について聞いた。

▽3割が「MASLD」

 脂肪性肝疾患は飲酒、栄養過多が原因で肝細胞に脂肪がたまり、肝臓が障害される病気。ただし、近年は肥満や生活習慣病に関わる脂肪性肝疾患が注目され、非アルコール性脂肪性肝疾患「NAFLD」は2023年、国際的に「MASLD(マッスルド、日本名は未定)」と名称が統一された。「MASLDは現在、最も多い肝臓病とされ、人口の約30%がかかっているとの報告もあります」

 脂肪性肝疾患の予後を知るには、肝線維化(肝臓の慢性的な損傷や炎症によって生じる傷)が最適とされる。ただ、肝線維化を評価するには、肝臓に針を刺して組織を採取する肝生検を行う必要があり、「患者の負担が大きい、合併症のリスクがある、肝臓全体を評価できない、多数の人に実施できないなどの問題があります」。

 肝生検に代わる検査として、十数年前に登場したのが非侵襲性の「超音波エラストグラフィ」だ。肝線維化に伴って強まる肝臓の硬さを超音波で調べる。最近は、超音波エラストグラフィによる肝硬度と他の臨床データ、年齢、性別などの情報を組み合わせて、肝線維化を高精度で評価するための「Agile(アジャイル)スコア」が利用されている。

▽著しく高い予測能

 米田准教授らの国際研究グループは、Agileスコアの値、時間的変化とMASLD患者の予後との関連性を検討した。対象は、欧米やアジアの16施設で超音波エラストグラフィ検査を受けた延べ約1万6600人のMASLD患者。

 その結果、「Agileスコアの値は3年後、5年後の肝細胞がん、肝不全などの発生と密接に関連し、肝生検による肝線維化などの従来の指標に比べ、著しく高い予測能を持つことが分かりました」。

 Agileスコアが持続的に高い患者の肝関連の病気の発生頻度は、低い患者の50倍に及んだ。「健診医やかかりつけ医から精密検査を勧められたら、迷わず受けましょう」と米田准教授は呼び掛ける。(メディカルトリビューン=時事)

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 横浜市立大学付属病院の所在地 〒236―0004 横浜市金沢区福浦3の9 電話045(787)2640

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