発熱や発疹、多くは自然軽快―アフリカで流行のエムポックス

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 発熱や発疹などの症状が出るエムポックスがアフリカを中心に流行している。世界保健機関(WHO)は8月、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言。国立感染症研究所(東京都新宿区)名誉所員の森川茂さんに特徴や対策などについて尋ねた。

▽差別の恐れで改称

 エムポックスは、1980年に根絶された天然痘と同じ系統に属するエムポックスウイルスによる感染症。アフリカに生息するリス、ネズミなどの野生動物から他の動物やヒトへ、さらにヒトからヒトへも感染する。2022~23年前半、アフリカ中部・西部で急増して欧米諸国にも広がり、今年に入って再び流行している。

 従来「サル痘」と呼ばれていたが、23年5月にエムポックスに変わった。「1958年にデンマークの研究施設で、実験用のサルに天然痘に似た症状の感染症が発生したことが契機でサル痘と呼ばれるようになりました。しかし、差別につながる恐れがあるため、WHOが名称を変更しました」

▽多くは症状なくなる

 症状は発熱、頭痛、リンパ節の腫れなどが5日程度まで続き、さらに発熱の1~3日後に発疹が顔面や四肢に多く現れ、徐々に盛り上がり、水膨れの状態を経てかさぶたになる。「多くの場合、症状が2~4週間続いた後に自然軽快(症状がなくなること)しますが、子どもや妊婦、免疫が低下している人らは重症化することがあります」

 ヒトへの感染は、エムポックスウイルスを持つ動物にかまれたり、その血液などと接触したりしたときに起こる可能性がある。ヒト同士の感染は、感染者の発疹、体液などに触れた時、近距離でせきをされた時など、感染者が使ったタオルなどを使用した時に起こり得る。

▽散発的流行も

 WHOによると、今年1月1日から9月8日までに、感染疑い例を含め、アフリカ14カ国で約2.5万人の患者が出て、723人が死亡した。致命率(その病気が原因で死亡した割合)は2.9%で、2022~23年の流行時より14倍近く高い。現在、コンゴ(旧ザイール)を中心に流行しているエムポックスは、22~23年と異なる系統のウイルスによるもので、病原性が強く、重症や死亡する人の増加が懸念される。

 「世界各地で散発的な流行が起こる可能性はありますが、大規模な流行を心配する必要はないでしょう。ただし、リスクの高い国から帰国して症状がある人は検査を受けてください」と森川さんは助言する。(メディカルトリビューン=時事)

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 国立感染症研究所の所在地 〒162―8640 東京都新宿区戸山1の23の1 電話03(5285)1111

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