犬と暮らしている人はペットを飼っていない人に比べ死亡率が低く、犬以外の動物と暮らす人ではそのような関連性はなかったと、国立環境研究所(茨城県つくば市)環境リスク・健康領域の谷口優主任研究員らが発表した。「犬など伴侶動物(ペット)との暮らしは、健康に良い影響があることが科学的に証明されつつあります」と谷口研究員は話す。 ▽さまざまなペットで比較 犬と生活している高齢者は、フレイル(加齢に伴う心身の衰え)の発生率や認知症の発症率が低い傾向が見られる。また、自立喪失(要介護または死亡)の発生率、介護費が減少するなどの報告もある。 死亡率に関しては、海外の研究10件をまとめて分析した報告で、犬を飼っている人は死亡率が低いことが報告されている。「猫の飼育も死亡リスクを低下させるとされていますが、否定的な報告もあります。その他の伴侶動物については十分検討されていませんでした」。そこで今回、犬以外の動物も含め、飼育している人の死亡率を検討した。 ▽社会にも好影響 谷口さんらは、オーストラリアでの世帯調査で得られた約1万6千人のデータを用いた4年間の追跡調査で、ペット飼育の有無や種類別での飼い主の死亡率を算出した。 その結果、犬を飼っている人の死亡率は非飼育者に比べて低く、有意に死亡リスクを低下させる効果が見られた。一方、犬以外の動物飼育者では死亡率との明確な関連性は示されなかった。「犬の世話を通じた運動習慣の維持が、心血管疾患による死亡のリスクを抑えたためと考えられます。過去の研究でも、同様の見方が示されています」 さらに「犬の散歩を通じて近所の人と話したり、社会とのつながりが維持されたりすることも健康に関係すると考えられます。犬との生活は飼い主にも社会全体にもさまざまな良い影響があります」と谷口さんは話す。(メディカルトリビューン=時事) ◇ ◇ 国立環境研究所の所在地 〒305―8506 茨城県つくば市小野川16の2 電話029(850)2359