口腔(こうくう)がんは、舌、口の底や頬の粘膜、歯肉など口の中にできるがんの総称だ。しこり、ぶつぶつ、治らない口内炎、粘膜が白いなどの症状が表れるが、発見されにくい部位にできがちで治療が遅れると経過は芳しくない。岩手医科大付属内丸メディカルセンター(盛岡市)の山田浩之歯科医療センター長に対策を聞いた。 ▽高齢化で増加 口腔がんは近年増加傾向にあり、年間1万人程度が新たにかかる。発がんリスクが最も大きいのは喫煙で、飲酒、加齢などが続く。合わない入れ歯による慢性的な刺激や不衛生も原因となり得る。 日本で喫煙率は低下している上、成人1人当たりの酒類消費量は増えていない。山田センター長は患者数の増加の背景を「高齢化が大きい」とみる。 口腔がんの治療は、小さながんなら手術で切除する。大きながんに対しては、手術を主体に抗がん剤や放射線治療などを組み合わせる。早期に発見して治療すれば経過は良好で、長期生存が期待できる。しかし進行してから見つかると、状況は厳しい。 治療の後遺症についても、がんが小さい段階で手術をすれば、患者の負担は最小限で済む。一方、がんが大きければ、切除範囲が広く負担は大きくなる。例えば、舌のがんで半分以上を切除した場合、他の部位から採取した組織で補っても、発話や飲食に支障が生じ、生活の質が落ちる恐れがある。 ▽満遍なく観察 発見が遅れる理由の一つに、口の中の複雑な構造がある。「舌の裏や脇など、普段は陰になっていて見えない部位がある。歯科医師も、がんを意識して観察しないと見つけられないことがあります」 自分でできる口腔がんのチェック法としては、岩手医科大の杉山芳樹名誉教授が考案した「あーかんべー検査」がある。鏡に向かって口を「あー」と開けて頬の粘膜を、上下の歯をかんで歯肉を、「べー」と舌を出して、その両サイドや下の粘膜まで満遍なく見る。 「1カ月に一度を目安に行ってはどうでしょうか」と山田センター長。「気になることがあれば、かかりつけの歯科医師に相談してください」とアドバイスする。(メディカルトリビューン=時事) ◇ ◇ 岩手医科大付属内丸メディカルセンターの所在地 〒020―8505 盛岡市内丸19の1 電話019(613)6111(代表)