精神的疲労を客観的に検出ーウェアラブル心電計で心拍変動解析

  • Facebookでシェアする
  • Medical Tribune公式X Xでシェアする
  • Lineでシェアする
感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ

 精神的疲労があるときは、心臓の拍動のわずかな揺らぎ(心拍変動)が変化する。金沢大保健管理センター(金沢市)の吉川弘明教授らはこのほど、体に装着する心電図検査装置(ウェアラブル心電計)から得た心拍変動を解析することで、精神的疲労を高い精度で検出できることを明らかにした。

▽厳格な試験で検討

 精神的な疲労を感じている人は多いが、「心の悲鳴」に気付かずに頑張ってしまう人もいる。

 吉川教授によると、精神的疲労を把握する手段として、さまざまな心理テストが用いられている。ただし、本人が回答する方法であるため、疲労を自覚していない場合は正しい評価が難しいことがある。

 その点、「ストレスなどによる自律神経の変化を反映する心拍変動の分析は、精神的疲労を客観的に評価できます」。しかし、これまで心拍変動による精神的疲労の検出能(機能)を厳格な試験で調べた研究はなかった。

▽気付かない疲労を検出

 吉川教授らは京セラ(京都市)と共同で研究を実施。20~65歳の健康な男女140人を対象に、計算問題を解くグループと休憩するグループに無作為に分けた。全員にウェアラブル心電計を胸部に装着してもらい、得られたデータで心拍変動を解析。精神的疲労の検出精度を、標準利用されている心理テスト(VAS法)と比較した。

 その結果、「心拍変動解析は精神的疲労を高い精度で検出でき、それはVAS法と同等であることが分かりました」。本人が自覚している精神的疲労を捉えるVAS法と、本人が気付かない精神的疲労を読み取る心拍変動解析を併用することで、より多面的な心の状態を把握できるという。

 吉川教授は「心拍変動解析によって、地震などによる被災者、配送ドライバー、自律神経疾患の患者ら、強いストレスを感じている状況の人の精神的疲労を簡単に、高精度で評価できる可能性があります。今後、心拍変動を捉えられる非接触型の心電計を用いた研究を進めたい」と話す。(メディカルトリビューン=時事)

   ◇   ◇

 金沢大保健管理センターの所在地 〒920―1192 金沢市角間町 電話076(264)5254(事務)

  • Facebookでシェアする
  • Medical Tribune公式X Xでシェアする
  • Lineでシェアする