大量の耳あかが、耳の入り口から鼓膜までの外耳道をふさぐように固まって詰まる「耳垢栓塞(じこうせんそく)」。放置すると、認知機能への影響も懸念されるという。刈谷きこえのクリニック(愛知県刈谷市)の杉浦彩子院長に話を聞いた。 ▽高齢者は特に注意 耳あかには、欧米人に多いネバネバした湿性(しっせい)と、アジア人に多い乾性がある。乾性の耳あかは通常、自然に排出されるが、高齢者は外耳道が硬くなり自浄作用が低下している場合が多いため、たまりやすい。「湿性の耳あか、外耳道の狭い小児、綿棒で耳掃除をする人なども、耳あかがたまりやすい傾向が見られます」と杉浦院長。 個人差はあるが、3カ月から1年ほどで耳垢栓塞に至るケースが一般的だ。3センチほどの長さになる場合もある。聴力低下などの自覚がなくても、放置すると外耳炎や中耳炎、さらに高齢者では外耳道の炎症および骨破壊を引き起こす外耳道真珠腫のリスクがあるという。 杉浦院長の研究グループが、60歳以上の男女約800人に、よく聴こえる方の耳の耳あかの有無と認知機能との関連を調べたところ、耳あかが認められた人の割合は、認知機能が高い人たちでは約10%、低い人たちでは約23%だった。「耳あかは聴力低下だけでなく、認知機能の低下とも関連が指摘されています」 ▽年1回は耳鼻咽喉科へ 耳垢栓塞は耳鼻咽喉科で除去できるが、そうなる前に対策を講じたい。ただし、日ごろの耳掃除は数週間から1カ月に1度で十分という。 「注意点は、耳の穴から1センチくらいの比較的広い部分までにとどめること。それ以上奥に耳かきを入れると、かえって耳あかを押し込んだり、外耳道の表面を傷つけて炎症が起きたりする場合があります」 自分で適切な耳掃除が難しければ、保険診療で行える耳鼻咽喉科での検査と耳掃除を活用したい。「高齢で補聴器を使用している人などは、1年に1回は検査と耳掃除をしてもらうことをお勧めします」。骨粗しょう症治療薬を長期間服用している場合も、外耳道真珠腫のリスクになることが報告されているため、定期受診を受けることが望ましい。 「特に高齢者のいる家庭では、ご家族など周囲の人たちが耳のケアを心掛けてあげてほしい」と杉浦院長はアドバイスしている。(メディカルトリビューン=時事) ◇ ◇ 刈谷きこえのクリニックの所在地 〒448―0001 愛知県刈谷市井ケ谷町久伝原1の1 電話0566(61)1133