早期からの対策が鍵ー子どもの近視

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 近視の低年齢化が進んでいる。文科省の2023年度学校保健統計調査によると、裸眼視力が1.0未満の子どもの割合は小学生で37.8%、中学生で60.9%、高校生で67.8%、幼稚園児でも22.9%と、近年増加傾向にあり、特に小中学生の増加が顕著だ。

 「視力低下を防ぐためには、早期の予防や発見、対策が肝心です」と東京科学大病院(東京都文京区)眼科学教室の大野京子教授は指摘する。

▽サインを見逃さない

 近視の主な要因は遺伝と環境だが、子どもの近視が世界的に増加する背景には、スマホを中心とする近くを見る作業の増加と屋外活動の減少がある。

 画面の小さいスマホやタブレットは、無意識のうちに目を画面に近づけて見ることが多く、使用時間も長くなりがちだ。「画面と目の距離は30センチ以上離し、30分画面を見たら20秒以上遠くを見て、目を休めましょう。近視予防には1日2時間の屋外活動が理想ですが、少しでも長く屋外で過ごす生活に変えましょう」

 子どもが学校の眼科検診で要再検査と判定されたり、物を見る際に目を細めたりしているのは視力低下のサイン。「眼鏡は掛けたくない」と我慢していると、近視が進む可能性がある。「子どもの眼鏡の度数は少し弱めがよいと誤解している人も多いですが、物を見る機能の発達のためには、軽度近視でもきちんと度数を合わせた眼鏡を掛けるのが重要です」

▽眼鏡以外の選択肢も

 近視の専門家として国際的に知られる大野教授によると「近視の進行抑制治療の研究は世界的に進んでいます。近視治療は日本では保険適用外の自費診療ではあるものの、例えば、4月下旬から眼科での処方が可能となる国産の低濃度アトロピン点眼薬を1日1回、寝る前に1滴点眼する治療法もある。これは、全国的に普及するのでは」という。

 他にも、特殊なコンタクトレンズを睡眠時に装着するオルソケラトロジー、専用の治療機器で赤い光を見るレッドライト治療法など選択肢が広がっている。

 「子どもの視力を積極的に守る社会的な意識改革が必要です。近視は眼鏡で矯正するものから、積極的に治療して進行を抑制するものに変わっています。近視が進む前に眼科医に相談してほしい」と大野教授は助言する。(メディカルトリビューン=時事)

   ◇   ◇

 東京科学大病院の所在地 〒113―8519 東京都文京区湯島1の5の45 電話03(3813)6111(代)

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