「悪玉」とも呼ばれる虫歯菌を保有する人は、保有しない人に比べ脳の出血を起こしやすく、認知機能障害との関連も示唆されているという。国立循環器病研究センター(大阪府吹田市)脳神経内科の猪原匡史部長に聞いた。 ▽リスクは20倍 虫歯の代表的な原因菌「ミュータンス」。中でも特殊なタンパク質「Cnm」を有するミュータンス菌を持つ人は、持たない人に比べ脳の毛細血管の出血(微小出血)がより多く見られるという。 「日本人の約1~2割が『悪玉』とも呼ばれるCnm陽性ミュータンス菌保有者と言われます。虫歯菌を保有していない人と比べた微小出血リスクは、通常の虫歯菌で約5倍、悪玉虫歯菌では約20倍に上ることが明らかになっています」と猪原部長。 ただ、これらの研究は過去のデータを解析したもの。そこで猪原部長の研究グループは2018~24年、約230人の虫歯菌保有者を通常の虫歯菌と悪玉虫歯菌の2グループに分け、2年間追跡する研究を実施。その結果、微小出血リスクは通常の虫歯菌保有者に比べ悪玉虫歯菌保有者でより高いことが分かったという。 「データは現在も解析中です。認知機能への影響については2年間でどこまで検証できるかは分かりませんが、微小出血が多い人はそうでない人より認知機能障害リスクが高まることが分かっているので、注意が必要です」 ▽「口は災いの元」 虫歯菌、とりわけ悪玉虫歯菌が脳の出血リスクにつながるとなれば、普段の歯磨きの重要性が高まる。 「日常的に適切な歯磨きを行うことが大切。虫歯菌をゼロにすることはできませんが、虫歯菌が減れば血管内に入り込む量を減らす効果は期待できます」。適切な歯磨きについては、かかりつけの歯科医師に相談したい。 「これまで虫歯や歯周病など口腔(こうくう)内の病気と脳や心臓など全身の病気は切り離して考えられていましたが、両者は密接に関わっていることが分かってきました。まさに『口は災いの元』。病気予防の一環として口腔衛生に取り組んでほしい」と猪原部長はアドバイスしている。(メディカルトリビューン=時事) ◇ ◇ 国立循環器病研究センターの所在地 〒564―8565 大阪府吹田市岸部新町6の1 電話0570(012)545