脳卒中後などに多いー高齢者のてんかん

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 子どもの病気というイメージがあるが、高齢者でも一定数が発症するてんかん。世界的に見ても、発症年齢は3歳以下が最も多く、その後は徐々に減るが、60歳以降では再び増加する。国立精神・神経医療研究センター病院(東京都小平市)脳神経外科の岩崎真樹部長に話を聞いた。

▽見過ごされる症状

 てんかんは、脳の神経細胞に突然発生する電気的な興奮により発作などを繰り返す病気。日本では約60~100万人の患者が存在するという。

 高齢者のてんかんは、〔1〕脳卒中後に起きる〔2〕アルツハイマー病やパーキンソン病に代表される脳の変性疾患に伴う〔3〕原因不明―のケースがある。

 〔1〕の場合はけいれんを伴う発作があるが、〔2〕や〔3〕では、けいれんはなく焦点意識減損発作(以前の名称は複雑部分発作)が特徴的。「意識が徐々に遠のいて周囲の状況が分からなくなり、ぼんやり一点を見つめていたり、手や口をもぞもぞ動かしたり(自動化)します。しかし、本人にはその間の記憶はありません」

 焦点意識減損発作の頻度は、おおむね週に数回~月に数回程度で、1回当たり30秒から1分ほど。自覚はなく症状も短時間のため、周囲も見過ごしてしまう場合が多い。

▽薬物療法で改善が期待

 高齢者のてんかんでは、言葉が思うように出てこなかったり、発作後にもうろうとした状態が続いたりするため、認知症やうつ病などと誤解されるケースもあるという。

 「周囲の人たちは、症状として明確なけいれん発作が見られなくても、普段と比べて様子がおかしいと感じたら、脳神経内科、脳神経外科、あるいは精神科の受診を勧めてください。その際、必ず症状を『目撃』した人が同席し、医師に伝えてほしいです」

 他の病気がないか確認した上で、脳波やMRIによる検査が行われる。てんかんかどうか分かりにくい場合は、入院による長時間脳波検査を行うケースも。

 てんかんと診断されれば、高齢者では体への負担がより少ない薬物療法が中心となる。「高齢者のてんかんは薬だけで症状の改善が期待できます。一方、高齢者は副作用が出やすいので、周囲の人は治療を始めてからもご本人の様子を観察し、診察時に主治医に状況を伝えてください」と、岩崎部長は呼び掛けている。(メディカルトリビューン=時事)

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 国立精神・神経医療研究センター病院の所在地 〒187―8551 東京都小平市小川東町4の1の1 電話042(341)2711(代表)

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