糖尿病治療の目的は心臓や血管の合併症を防ぐことで、そのためには腎臓の機能を保つことが重要だ。東京大大学院医学系研究科(東京都文京区)先進循環器病学講座の金子英弘特任准教授らのグループは、「SGLT2阻害薬」と呼ばれる糖尿病薬の腎保護効果は、患者の肥満度が高いほど強まることを突き止めた。 ▽糖を尿中に出す薬 研究グループは、糖尿病などに2014年から使われているSGLT2阻害薬に着目。余分な糖を尿中に排出する働きがあることから、肥満度を表す体格指数(BMI)と腎保護効果との関連を調べた。 14~22年にSGLT2阻害薬、または「DPP4阻害薬」を新たに飲み始めた2型糖尿病患者の匿名化データを基に開始時の年齢、BMI、血液検査値、併用薬などの条件をそろえて、二つの薬を比較した。 ▽患者ごとの最適治療に 腎機能を表す「推算糸球体ろ過量(eGFR)」という検査値の低下スピードは、SGLT2阻害薬を服用したグループ(2165人)の方が、DPP4阻害薬グループ(4330人)よりも緩やかだった。また、SGLT2阻害薬では患者のBMIが大きいほど、腎機能低下を抑制する効果が高かった。 「糖を排出するSGLT2阻害薬は、カロリー制限と同じ理屈で体重を減らす働きがある。もともと肥満は腎臓に良くないので、BMIが高い人の方が、体重減少による腎保護の恩恵が大きいのだろう」 SGLT2阻害薬の腎保護効果は臨床試験で確認済みだが、実際の診療データでBMIと絡めて裏付けたのは世界で初めてという。「患者さんの特性に応じた薬物療法に役立つでしょう」と金子特任准教授は話す。(メディカルトリビューン=時事) ◇ ◇ 東京大医学部付属病院の所在地 〒113―8655 東京都文京区本郷7の3の1 電話03(3815)5411(代表)