虚血性心疾患は,冠動脈硬化を基に発症することから,その危険因子として高血圧,高コレステロール血症,高尿酸血症,糖尿病,肥満,ストレスなどが挙げられます。そのため,虚血性心疾患の患者さんにとって何が危険因子であるかを見極めて食事療法を行うようにしましょう。 心筋梗塞の場合,急性期に食事を開始することは,心拍,血圧の上昇を引き起こし,心筋の酸素必要量が増して負荷をかけるため,量,形態ともに病状に合わせてステップアップします。炭水化物を中心とした流動食から三分がゆ,五分がゆ,全がゆ食へと進めていきます。安定期では,再発防止を目的として,脂質異常症,高血圧の食事方針に準じます。 狭心症の場合は,以下のことに留意しましょう。(1)低エネルギー食として標準体重を維持する量とする(2)心筋や静脈の新陳代謝を円滑にして,これらを増強するために比較的高蛋白質(総エネルギーの15~20%)にする(3)多価不飽和脂肪酸を多めに取る(4)総コレステロール量は300mg/日以内とする(5)食塩量は病状に応じて5~7g/日とする(心臓への負担軽減と血圧の安定を目標として減塩する)(6)便秘は排泄時に血圧を上昇させるため,食物繊維を10g/1,000kcalを目安に取る(7)心筋が円滑に機能できるよう,ビタミン,ミネラルが不足しないように注意する(8)禁酒,禁煙を守る。 また,納豆やグレープフルーツにも留意しましょう。狭心症の場合は,血管や心臓内の血栓形成を防止するため,経口抗凝固薬のワルファリンが使用されます。納豆に多く含まれるビタミンKはワルファリンの抗凝固作用を減弱させるので制限します。また,グレープフルーツジュースは狭心症治療薬であるカルシウム拮抗薬の効果を増強しますので注意しましょう。