下痢は,(1)腸管の蠕動運動の亢進(2)腸管からの水分,粘液分泌の増加(3)腸粘膜の吸収能力の低下--した場合に起こります。通常,便の水分量は60~80%で,下痢の場合は90%となります。その原因は不消化食物の物理的な刺激,食物の腸内での異常発酵や腐敗,細菌感染,中毒性物質の摂取やアルコールの過飲などが挙げられます。 急性下痢症の場合は短期間で軽快することが多いため,栄養補給よりも水分補給に重視して,脱水症状を起こさないよう,湯冷ましや薄い番茶,スポーツ飲料を体温程度の温度で少量ずつ,頻回に与えます。特に小児や高齢者の水分補給には注意しましょう。 慢性下痢症は原因となる病態への対応と並行して食事療法を行います。経過が長引くので低栄養状態になりやすいため,エネルギー,蛋白質,ビタミン,ミネラルなどが不足しないように注意します。 慢性下痢症の場合には,次の点に留意しましょう。(1)腸を刺激しない消化の良い食事を取る(2)少量ずつ頻回とする(3)脂質が少なく食物繊維の少ない食事内容にする(4)発酵しやすい食品(芋類,砂糖,酸味の強い果実)の多量摂取は避ける(5)腸を刺激する食品(カレー粉,わさび,唐辛子,からしなど)や飲料(炭酸飲料,アルコール飲料など)は避ける(6)水分を補う(常温で取る)(7)よくかんで,リラックスした状態で飲食する。