肝臓は,腸から吸収された栄養素のほとんどが門脈を経て集まる臓器で,各種栄養素の代謝を営む機能を持っています。肝臓に障害が起きると,各種栄養素の代謝に異常を来し,血清蛋白質の合成・分解が低下,血清アルブミン量が減少します。これらの症状は血液の浸透圧に影響を及ぼします。肝臓疾患の食事療法の基本方針は,病変により破壊された肝細胞の修復や再生を促進させること,および低蛋白血症を回復させることとします。 (1)エネルギーは十分に取る:蛋白質独自の働きをするためには十分なエネルギーの補給が必要になります。取り過ぎは肥満につながり,肝臓に悪影響を及ぼすので注意しましょう。(2)蛋白質をしっかり取る:肝臓の再生修復のために良質の蛋白質をしっかり取るようにします。しかし,GOT・GPTやLDHが非常に高い値を示すときは肝細胞が破壊されているので,多くの蛋白質を与えても,肝細胞が修復されず,血中アンモニアが増加することもあるので注意します。(3)脂肪は黄疸の強い場合は制限する:脂肪の摂取はエネルギー比20~25%にし,黄疸発現期は,脂肪の吸収率が低下しているので脂肪を制限します。(4)各種のビタミンをしっかり取る:肝臓が侵されるとビタミンの貯蔵・代謝障害が起こるため十分に摂取しましょう。特に黄疸発現期は,胆汁の分泌減少により脂溶性ビタミン(A・D・E・K)の腸からの吸収が不良になるため,不足しないように注意します。 肝臓の疾患は,食欲不振,発熱,吐き気,腹部膨満感,下痢,便秘,腹水,黄疸などいろいろな症状が現れます。これらに応じた食事を出すことが大切になります。 次回からおもな疾患について記述いたします。