透析患者の食事制限は,透析療法の進歩により,慢性腎不全の保存療法期に比較すれば,さほど必要ではなくなりました。透析導入前の蛋白質摂取制限も緩和されますので栄養状態の改善が見られます。しかし,透析患者の高齢化と長期化に伴って,低栄養状態が続き,栄養障害を引き起こす患者も多くなっています。 透析患者の食事療法の基準は,エネルギー30~35kcal/kg/日(脂質エネルギー比30%),蛋白質1.1~1.3g/kg標準体重/日,リン800~1,000mg/日以下,カルシウム600mg以上,カリウム1.5~2g/日,食塩6~7g,水分1,000mL/日(食事のみ)とします。 消費エネルギーに見合う十分なエネルギー摂取が必要ですが,長期にわたる場合には脂質異常症や動脈硬化を予防するためにも取りすぎに注意します。また食塩の取りすぎは,浮腫や水分貯留,高血圧の原因になるので注意しましょう。佃煮,漬物などは避けて,味付けを工夫して薄味でもおいしく食べられるようにしましょう。 蛋白質は肉類,魚介類,鶏卵,大豆・豆製品,牛乳などアミノ酸スコア,蛋白価の高い良質のものを優先します。ただし,これらの蛋白質はカリウムも多く含みますので,高カリウム血症を防ぐため,過剰にならないよう調理法などで工夫しましょう(例えば,野菜はゆでこぼす,表面積を大きくして水にさらすなど)。水分の取りすぎにも注意します。透析間の体重をドライウエイトの5%以内に,できれば3%まで抑えるようにします。6%を超えると心臓の負担が増大し,心不全の原因になります。前述した食塩の取りすぎは水分の取りすぎにもつながりますので,食塩量には十分考慮しましょう。