慢性腎不全の食事療法は,低下した腎機能の範囲で身体の恒常性を保ち,腎機能低下の進行を防ぐことを目的とします。特に蛋白質の異化が亢進すると,蛋白質代謝産物が尿中へ排泄されにくくなり,血中に尿毒素を含む窒素化合物が蓄積するようになります。これを防ぐためには蛋白質制限が行われます。 厳しい蛋白質制限食を取る場合,炭水化物,脂質がエネルギー源となりますが,日常の食品で食事療法を行おうとすれば,砂糖と油脂に頼ることになります。自然食品だけでは栄養状態の低下などやエネルギー不足になりかねません。蛋白質制限とともにエネルギー摂取量を確保することが大切になります。 この点を解決するためには,無~低蛋白質でありながらエネルギー含有量の高い食品を摂取することが大事になります。腎臓病治療のための治療用特殊食品を使用することが必要です。エネルギー調整食品,蛋白質調整食品,食塩調整食品,リン調整食品などがあり,水分や電解質の管理をします。水分の貯留や電解質異常(ナトリウム貯留,高カリウム血症,高リン血症など),代謝性アシドーシスなどが起きてくるため,程度に応じた食塩制限やカリウム,リン制限などが必要になります。これらの治療用特殊食品はそれぞれ調理の特性がありますので,工夫をしておいしく食べられるようにしましょう。