骨に含まれるカルシウムが減少して骨がもろくなる骨粗しょう症は、閉経後の高齢女性に多い。ところが、これと同じ状態が妊娠後期から授乳期でも起こることがあり「妊娠後骨粗しょう症」と呼ばれている。亀田総合病院(千葉県鴨川市)生殖医療科の大内久美医長は「10歳代後半から20歳代にかけて、運動やダイエットで無月経になった経験がある人は注意が必要です」と呼び掛ける。 ▽症状は腰や背中の痛み 妊娠後骨粗しょう症は、86%が初産婦だという報告もある。症状は、骨折や圧迫骨折による腰や背中の痛みだ。しかし、これらが骨粗しょう症の痛みかもしれないと気付くのは難しいという。 骨では破骨細胞が骨を吸収し、骨芽細胞が新たに骨を作り替えている。骨量は20歳ごろがピークだ。女性の場合、エストロゲンという女性ホルモンの影響が大きく、「エストロゲンは骨吸収を抑制し、骨形成を助ける作用があります」。 妊娠中は、胎児にカルシウムを供給するため、体内のビタミンDが活性化してカルシウム吸収を促進させる。しかし、吸収量には個人差があり、不足分は母体の骨のカルシウムも利用される。 さらに授乳期は、母乳を作るために分泌されるプロラクチンというホルモンの影響で排卵とエストロゲンの分泌が抑制され、カルシウムが母乳に溶け出して乳児へ供給されるため、結果的に母体の骨量が低下する。「これらは生理的なもので、健康な女性であれば卒乳後、半年から1年ほどで回復します」 ▽痩せや無月経に注意 ところが、もともと骨量が著しく少ない人に妊娠による生理的な骨量の低下が加わると、妊娠後骨粗しょう症を発症しやすくなる。 原因の一つに、運動やダイエットなどによる痩せや、痩せによる無月経がある。無月経は低エストロゲン状態を意味し、しっかりとした骨を作ることができない。「20歳ごろまでにどれだけ骨量を蓄えられるかが、妊娠後骨粗しょう症の予防につながります」 治療については決まった指針がなく、卒乳後も骨密度の回復が見られない場合のみ、薬剤などの治療を検討することもある。 大内医長は「妊娠中の長引く腰や背中の痛みは婦人科へ、授乳期であれば整形外科へ相談してください。妊娠前に何度も骨折をした経験がある人は、事前に骨密度を測定し、リスクを知っておくとよいでしょう」とアドバイスしている。(メディカルトリビューン=時事) ◇ ◇ 亀田総合病院の所在地 〒296―8602 千葉県鴨川市東町929 電話04(7092)2211(代表)