JDDW 2025:日常臨床の助けとなる内視鏡診療を目指して

第110回日本消化器内視鏡学会総会 会長
京都第二赤十字病院

田中 聖人 氏

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感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ

田中 聖人 氏

 近年、消化器内視鏡診療をめぐっては、情報通信技術(ICT)や人工知能(AI)の発達に伴うさまざまな進歩が見られ、その最前線では活発な議論が展開されています。学問にはトレンドがあり、学会をはじめとする場ではそういった最先端の領域が注目されやすい一方、「患者を診るときに困っているが、なかなか話題にならない」という領域もあります。そこで今回の日本消化器内視鏡学会では、この領域のコアな研究について田中信治理事長による講演「早期大腸がん内視鏡診療の現状と将来展望」や、会長講演「消化器内視鏡領域のデータベース運用と構築」などで触れつつ、全体のテーマは「実地臨床に資する検討と議論」としました。「医学研究は日常臨床の助けとなるものであるべき」という思いが根底にあります。

 いずれのセッションも本テーマに基づいた構成となっておりますが、シンポジウム6「原因不明消化管出血の現状と課題」およびワークショップ19「緊急内視鏡診療の適応と限界(胆膵・消化管)」には特に色濃く反映されていると思います。例えば、消化管出血への対応において内視鏡を用いた治療は非常に有用ですが、「出血が見つかった場合、夜間であっても常に内視鏡手術を施行すべきか」などは検討が必要です。緊急内視鏡手術などの適応をめぐっては理論上の議論も大切ですが、これらのセッションでは「どうしても対応が難しい、こういうことで困った」という実臨床上の課題について討論を深められるだろうと期待しています。

 Strategic International Session(ST)ではアジアを中心に海外の研究者を多数お招きしています。ST3「大腸腫瘍に対する内視鏡治療の最前線」は治療戦略について理解しやすいようビデオセッションとしましたので、英語による学会発表の雰囲気を感じていただくことはもちろん、ぜひ素晴らしい演者の方々に現地で直接質問する好機としていただきたいです。また、本学会をはじめ、国内外の学会に現地参加することで得られる経験は貴重である一方で、人手不足など昨今の医療施設の状況に鑑みると「病院に居ながらにして、各地の研究者と手技を見せ合って議論できる」ことへの需要はますます高まっています。特別講演「国際的遠隔医療教育:20年の軌跡を振り返って」では、2000年代初頭からインターネットを活用した国際的カンファレンスの仕組みづくりに尽力されてきた九州大学名誉教授の清水周次氏にお話を伺います。ICT活用の今を知る上でとても良い機会になるものと期待しております。

 会長として「たくさんの方々と現地でお目にかかりたい」という気持ちはもちろんありますが、オンライン参加の方々にも、例えば「時間が重なっているセッションを複数聴講できる」といった独自のメリットがあります。ぜひそれぞれのスタイルでJDDW 2025を存分にご体験いただければと思います。

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