結節性硬化症に大麻由来薬、長期にてんかん抑制

カンナビジオールを抗てんかん薬に上乗せ

  • Facebookでシェアする
  • Medical Tribune公式X Xでシェアする
  • Lineでシェアする
感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ

 結節性硬化症(TSC)は常染色体優性(顕性)遺伝性の疾患で、TSC患者の約63%が難治性てんかんを発症する。米・University at Buffalo/Oishei Children's HospitalのArie Weinstock氏らは、TSC患者34例を対象に、米国でTSCに伴う難治性てんかんの治療薬として承認されている大麻草由来カンナビジオール(CBD)100mg/mL経口液(商品名Epidiolex)の抗てんかん発作薬(ASM)への上乗せの長期有効性および安全性を非盲検試験で検討。その結果、CBD投与開始後144週にわたり痙攣性、焦点性、全般性発作のてんかん発作頻度が低下し、安全性プロファイルは既報と一致したとEpilepsia Open(2024年8月1日オンライン版)に発表した。なお、Epidiolexは日本国内での臨床試験が進行中。

発作半減は全般性発作で46%超

 対象は、米国の35施設でTSCと確定診断された患者34例。平均年齢は12.4歳(範囲1.8~31.2歳)で、ベースラインで中央値3剤(範囲1~7剤)のASMを使用していた。ASMはクロバザム(59%)が最も多く、次いでラモトリギン(41%)、レベチラセタム(32%)だった。これらの対象に、各施設と治験審査委員会(IRB)の承認状況に応じてASMに上乗せしてCBDを2~10mg/kg/日から25~50mg/kg/日まで漸増投与した。

 有効性の評価項目は、投与開始後144週までの各評価時点(12週間隔)における、①月間てんかん発作頻度のベースラインからの低下率、②発作頻度がベースラインと比べて50%以上低下、75%以上低下、100%低下(無発作)となった患者の割合―の2項目とした。安全性の評価項目は、233週までに発現した有害事象とした。

 CBD投与期間の中央値は1,102日(範囲85~1,631日)だった。中央値CBD投与量は36週まで25~28mg/kg/日に維持され、以降は228週まで20~50mg/kg/日だった。ASM投与量は、トピラマート投与例を除く大部分の患者でベースラインと比べて減量されていた。

 144週までの各評価時点における月間てんかん発作頻度のベースラインからの低下率(中央値)は、痙攣性発作で44~81%、焦点性発作で51~87%、全般性発作で44~87%だった。

 発作頻度がベースラインと比べて50%以上低下/75%以上低下/100%低下(無発作)となった患者の割合は、痙攣性発作で43~71%/14~58%/0~25%、焦点性発作で52~75%/35~60%/7~32%、全般性発作で46~79%/26~65%/0~13%だった。

高頻度の有害事象は傾眠、下痢、運動失調

 安全性の評価では、233週までに34例中32例(94%)に1件以上の有害事象が発現し、22%が軽度、41%が中等度、38%が重度と報告された。治療関連有害事象(TRAE)は68%に発現し、傾眠(32%)が最も多く、次いで下痢および運動失調(ともに15%)だった。重篤な有害事象は47%で報告されたが、いずれも治療関連でないと判定された。有害事象による投与中止は2例で、死亡はなかった。

 以上を踏まえ、Weinstock氏らは「TSC患者に対するCBDの長期使用を支持するものだ 」と結論している。

国内でも希少疾病用医薬品に指定、治験進行中

 CBDをめぐっては、国内でも追い風が吹いてきている。昨年(2023年)12月6日に、大麻草由来の成分を含む医薬品を認める大麻取締法などの改正法が可決、成立。今年4月26日には、厚生労働省の専門部会が大麻草由来の医薬品として初めてCBD(Epidiolex)の希少疾病用医薬品への指定を了承した。

 Epidiolexは指定難病のドラベ症候群、レノックス・ガストー症候群、TSCに伴う難治性てんかんに効果があるとされ、現在、国内で臨床試験が進行中。今回、CBDの長期有効性・安全性が確認されたことは、これらの難病患者の救済を後押しするものと期待される。

(太田敦子)

  • Facebookでシェアする
  • Medical Tribune公式X Xでシェアする
  • Lineでシェアする