肺がんGL改訂、EGFR変異陽性への選択肢拡大 薬物療法の主な改訂点を整理 参考になった 名の医師が参考になったと回答 記事をクリップ 記事をクリップして、あとでマイページから読むことができます Facebookでシェアする Xでシェアする Lineでシェアする 今年(2024年)10月20日、日本肺癌学会編『肺癌診療ガイドライン2024年版』(以下、2024年版)が1年ぶりに刊行された。第65回日本肺癌学会(10月31日〜11月2日)での岡山大学病院新医療研究開発センター部長・堀田勝幸氏の報告を基に、非小細胞肺がん(NSCLC)の周術期とⅣ期、および小細胞肺がん(SCLC)に対する薬物療法に関する主な改訂点をまとめた。なお、2024年版の全文は日本肺癌学会公式サイトで閲読できる。 周術期NSCLC:術前術後ペムブロ、術後アレクチニブが追加 2024年版でも従来と同様、各クリニカルクエスチョン(CQ)についてシステマチックレビューを行い、推奨を決定した。推奨度は方向「行う/行わない」×強さ「強い(1)/弱い(2)」の4段階で表し、エビデンスレベルはA(強)、B(中)、C(弱)、D(とても弱い)の4段階で評価した。 近年、周術期NSCLCに対しては術前および術後補助薬物療法の最適化に関する議論が活発化している。前回の2023年版では、新たに臨床病期Ⅱ〜ⅢA期に対する術前プラチナ製剤併用療法+ニボルマブの推奨が加えられたが、2024年版ではペムブロリズマブの記載も追加。術前プラチナ製剤併用療法への術前術後のペムブロリズマブ上乗せを検証したKEYNOTE-671試験の結果〔無イベント生存(EFS)のハザード比(HR)0.58、95%CI 0.46〜0.72、P<0.001、N Engl J Med 2023; 389: 491-503〕を踏まえ、臨床病期Ⅱ〜ⅢB期NSCLCに対して「術前にプラチナ製剤併用療法とペムブロリズマブを併用し、術後にペムブロリズマブの追加を行うよう弱く推奨する」(推奨の強さ:2、エビデンスの強さ:B)と記載された。 さらに周術期NSCLCに対しては、免疫チェックポイント阻害薬だけでなくチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)に関する記載も追加。術後におけるプラチナ製剤併用療法に対するALK-TKIアレクチニブ単剤療法を検証したALINA試験の結果〔無病生存(DFS)のHR 0.24、95%CI 0.13〜0.45、P<0.001、N Engl J Med 2024; 390: 1265-1276〕を踏まえ、完全切除したALK融合遺伝子陽性の病理病期Ⅱ〜ⅢB期NSCLCに対して「従来の術後補助薬物療法の代わりとしてアレクチニブによる治療を行うよう弱く推奨する」(推奨の強さ:2、エビデンスの強さ:B)と記載された(関連記事:「ALK-TKIアレクチニブ、術後補助療法でも著効」)。 Ⅳ期NSCLC:ALK陽性一次治療でのロルラチニブ、「強く推奨する」に 免疫チェックポイント阻害薬を含む分子標的薬の登場以降、治療体系が目まぐるしく変化しているⅣ期NSCLCについては、2024年版ではEGFR遺伝子変異陽性例の一次治療で大きな変更があった。EGFR遺伝子変異陽性の約90%を占めるエクソン19欠失/L858R変異に対しては既にEGFR-TKIオシメルチニブ単剤療法が標準治療として確立しているが、昨年、オシメルチニブへのプラチナ製剤+ペメトレキセド併用の上乗せ効果を検証したFLAURA2試験の結果が報告された。同試験で無増悪生存(PFS)のHRが0.62(95%CI 0.49〜0.79、P<0.001、N Engl J Med 2023; 389: 1935-1948)と併用群で有意なPFS延長が認められた点を踏まえ、2024年版では「オシメルチニブ+プラチナ製剤+ペメトレキセド併用療法を行うよう弱く推奨する」(推奨の強さ:2、エビデンスの強さ:B)と記載された。 さらに、EGFR遺伝子変異陽性例の中でエクソン19欠失/L858R変異以外のuncommon mutationの一次治療でも記載の追加があった。エクソン20挿入変異を除くuncommon mutationについては、プラチナ製剤併用療法に対するEGFR-TKIアファチニブ単剤療法を検証したACHILLES/TORG1834試験の結果(PFSのHR 0.42、95%CI 0.26〜0.69、P<0.001)を踏まえ、「エクソン18-21の遺伝子変異(E709X、G719X、S768I、P848L、L861Q、エクソン19の挿入変異など)にはアファチニブ単剤療法を行うよう強く推奨する」(推奨の強さ:1、エビデンスの強さ:B)と記載。さらにuncommon mutationの中で最も多く、EGFR-TKIが効きにくいとされるエクソン20挿入変異に対しては、9月24日に承認されたばかりの新規二重特異性抗体アミバンタマブが、プラチナ製剤併用療法への上乗せ効果を検証したPAPILLON試験の結果(PFSのHR 0.40、95%CI 0.30〜0.53、P<0.001、N Engl J Med 2023; 389: 2039-2051)を踏まえ、「カルボプラチン+ペメトレキセド+アミバンタマブ併用療法を行うよう強く推奨する」(推奨の強さ:1、エビデンスの強さ:B)と記載された。 Ⅳ期NSCLCの薬物療法については、他にもALK融合遺伝子陽性で全身状態(PS) 0〜1例への一次治療で変更があった。クリゾチニブ単剤療法とロルラチニブ単剤療法を比較したCROWN試験でPFSのHRが0.28(95%CI 0.19〜0.41、P<0.001、N Engl J Med 2020; 383: 2018-2029)であった点、さらに今年の米国臨床腫瘍学会(ASCO 2024)で報告された同試験の5年追跡結果で両群の差がさらに開いていた点(PFSのHR 0.19、95%CI 0.13〜0.27、J Clin Oncol 2024; 42: 3400-3409)を踏まえ、2023年版の「ロルラチニブ単剤療法を行うよう提案する」(推奨の強さ:2、エビデンスの強さ:B)が「ロルラチニブ単剤療法を行うよう強く推奨する」(推奨の強さ:1、エビデンスの強さ:B)に変更された(関連記事:「進行NSCLC、ロルラチニブで予後が大幅改善」)。 再発SCLCへのtarlatamabが新設 SCLCについては、近年、進展型SCLC(ED-SCLC)への薬物療法において抗PD-L1抗体(アテゾリズマブ、デュルバルマブ)を併用したレジメンが標準治療となりつつある。抗PD-L1抗体併用療法に関するエビデンスはいずれもPS 0〜1例を対象としていたことから、2024年版ではED-SCLC治療の樹形図を改め、PS 0〜2をPS 0〜1とPS 1〜2の別立てとした。 再発SCLCに対しては、今年5月に承認申請された二重特異性T細胞誘導(BiTE)抗体tarlatamabが「三次治療以降にタルラタマブ療法を行うよう弱く推奨する」(推奨の強さ:1、エビデンスの強さ:B)と記載された(関連記事:「進行小細胞肺がんに新規BiTE抗体が有望」)。 (編集部:平山茂樹) 参考になった 名の医師が参考になったと回答 記事をクリップ 記事をクリップして、あとでマイページから読むことができます Facebookでシェアする Xでシェアする Lineでシェアする ×