注射剤のアナフィラキシーによる死亡が19例発生 ヨード造影剤、抗菌薬などの血管内投与後に発症 参考になった 名の医師が参考になったと回答 記事をクリップ 記事をクリップして、あとでマイページから読むことができます Facebookでシェアする Xでシェアする Lineでシェアする 日本医療安全調査機構(医療事故調査・支援センター)は3月19日、ヨード造影剤、β-ラクタム系抗菌薬、抗悪性腫瘍薬などの注射剤を血管内投与した後にアナフィラキシーショックに至り死亡した成人事例が19例発生したとして、「医療事故の再発防止に向けた警鐘レポートNo.2」(以下、レポートNo.2)を発行。これを受けて厚生労働省は同日付で、医政局地域医療計画課医療安全推進・医務指導室長通知(医政安発0319第6号)および医薬局医薬安全対策課長通知(医薬安発0319第1号)を発出し、関係団体に確認と周知を依頼した。(関連記事「ワイヤー抜去時の心損傷で死亡が3例発生」「不正確なカルテ記載で耐性菌感染症が増加」) 初発症状は苦しいが最多、約7割が皮膚症状なし 日本医療安全調査機構は、2018年1月に「医療事故の再発防止に向けた提言 第3号:注射剤によるアナフィラキシーに係る死亡事例の分析」(以下、提言第3号)を発行。①あらゆる薬剤、複数回安全に使用できた薬剤でも発症し得る、②発症の危険性が高い薬剤使用時は注意深い観察を、③症状が出現したら薬剤投与を中止しアドレナリン準備を、④疑いがあればためらわずにアドレナリンの筋肉内注射を、⑤速やかなアドレナリン筋肉内注射が可能な体制の整備を、⑥患者の薬剤アレルギー情報を把握し共有できるシステムを-の6項目を提示していた。 今回、提言第3号の公表以降、注射剤の血管内投与後にアナフィラキシーショックを呈し死亡した成人事例が19例集積されたことから、レポートNo.2としてまとめた。 原因薬剤は表の通り。種類別では造影剤が9例、抗菌薬が7例と多く、中分類ではヨード造影剤の8例が最多、β-ラクタム系抗菌薬の6例が続いた。 表. 原因薬剤 初発症状(重複あり)は苦しいの6例が最多で、気分不快、瘙痒感の各4例、咳嗽、嘔気、紅潮・発赤の各3例が続いた(図1)。アナフィラキシーに特徴的な皮膚症状がない事例が約7割を占めた。 図1. 初発症状(重複あり) (表、図1とも「医療事故の再発防止に向けた警鐘レポートNo.2」を基に編集部作成) 進行は急速:投与から中央値で10分以内に心停止 注射剤投与から初発症状発現までの時間中央値は2分(最短:直後、最長:10分)、初発症状から心停止までの時間中央値は7分(同直後、1時間22分)と、進行が極めて速かった。 最も多かったヨード造影剤、β-ラクタム系抗菌薬による主な事例は、以下の通り。 ●ヨード造影剤 ・60歳代の直腸腫瘍例。CT検査室で発症、造影剤によるアレルギー症状の既往なし イオメプロール注入直後に咳嗽が出現。初発症状から1分後(撮影中)に気分不快感、2分後(撮影終了)に著明な眼結膜充血、冷汗、嘔気、顔面発赤を認め、医師などに連絡。5分後に嘔吐し意識レベルが低下したため、アドレナリン0.3mgを筋肉内注射し緊急コール。8分後には血圧測定不能となり、救急処置を実施するも約1時間後に死亡。 ・70歳代の肝細胞がん症例。CT検査室で発症、ヨード造影剤(イオヘキソール)使用時に軽度のアレルギー症状の既往あり イオメプロール注入の8分後に咳嗽と顔面紅潮が出現。直後にJapan Coma Scale(JCS)Ⅲ-200~300となり、緊急コール。1分後に呼吸停止、頸動脈触知不能となり、心肺蘇生を開始。3分後にアドレナリン1mgを静脈内注射し、救急処置を実施するも約1カ月後に死亡。 ●β-ラクタム系抗菌薬 ・70歳代の急性胆管炎例。病室で発症、β-ラクタム系抗菌薬(タゾバクタム・ピペラシリン配合剤)使用時にアレルギー症状の出現あり セフォペラゾン・スルバクタム配合剤の点滴開始1~2分後に顔面紅潮、両上肢発赤、瘙痒感、息苦しさが出現したため、投与を中止し医師に連絡。初発症状から3~4分後に心停止となり心肺蘇生を開始し、アドレナリン0.5mgを筋肉内注射。13~14分後に2回目のアドレナリン0.5mgを筋肉内注射。17~18分後に緊急コールし、救急処置を実施するも翌日に死亡。 ・80歳代の咽頭痛例。診療所で発症、過去の薬剤アレルギー歴は不明 セフトリアキソン静脈内注射の直後にくしゃみ、「イライラする」と訴えたため抜針。直後に顔面紅潮、意識レベルが低下。2分後に救急要請し、血圧測定不能、呼吸停止となり心肺蘇生を開始。13分後にアドレナリン1mgを静脈内注射し、救急搬送。救急処置を実施するも約3週間後に死亡。 レポートNo.2では対策として、注射剤投与後に初発症状が出現した時点で皮膚症状がなくてもアナフィラキシーを疑い、直ちに緊急コール とアドレナリン筋肉内注射を行うことを推奨。アドレナリン筋肉内注射のポイントと合わせて提示している(図2)。 図2. 注射剤投与によるアナフィラキシーショック対策およびアドレナリン筋肉内注射のポイント (「医療事故の再発防止に向けた警鐘レポートNo.2」より) さらにアナフィラキシー対応の備えとして、緊急対応のプロトコールを作成し、周知、訓練することとし、①造影剤、抗菌薬、抗悪性腫瘍薬などを使用する場所にアドレナリンを配備、②薬剤アレルギー情報の把握・共有、③薬剤投与開始時から5分間、観察する-ことを求めている。 (編集部・関根雄人) 参考になった 名の医師が参考になったと回答 記事をクリップ 記事をクリップして、あとでマイページから読むことができます Facebookでシェアする Xでシェアする Lineでシェアする ×