【パリ時事】世界保健機関(WHO)加盟国は16日、コロナ禍を教訓に将来の感染症のパンデミック(世界的大流行)対策を強化する「パンデミック条約」策定交渉で合意に達した。条約案は5月のWHO年次総会で採択される見通しだ。 交渉会合は先進国と途上国の利害対立で難航し、2022年の開始から3年余りに及んだ。合意を優先して議論を先送りした懸案もあり、それらを解決して条約が発効・機能するまでには時間がかかるとみられている。 WHOは声明で「加盟国が世界を安全にする取り組みで大きく前進した」と強調した。 各国が合意した条約案は、締約国がパンデミックの「予防、備え、対応」を手厚くすると規定。先進国がワクチンを囲い込んだコロナ禍の失敗を繰り返さないよう、医薬品の研究開発や技術移転、製造、資金調達での途上国支援を明記した。 2月時点の草案は(1)製薬会社が生産する医薬品の10%を緊急事態下でWHOに無償提供し、途上国に分配する仕組み(2)締約国が過剰な備蓄を控える方針(3)動物からヒトへの感染予防によるパンデミックの早期封じ込め―なども掲げており、合意案に盛り込まれたとみられる。 コロナワクチンを開発したファイザーなど世界的な製薬企業を擁する米国は、今年1月のトランプ政権発足時にWHO脱退を表明し、条約交渉から離脱した。米国を欠く条約については実効性を疑問視する見方もある。 (2025年4月16日 時事メディカル)