利尿薬に急性近視や閉塞隅角緑内障の副作用

使用上の注意改訂:ドンペリドンは妊婦禁忌解除

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感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ

 厚生労働省は昨日(5月20日)付で医薬局医薬安全対策課長通知(医薬安発0520第1号、第2号)を発出し、添付文書の「使用上の注意」の改訂を指示。利尿薬のうちスルホンアミド構造を有する炭酸脱水酵素阻害薬、サイアザイド系利尿薬、ループ利尿薬およびこれらとアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)の配合薬13製品は「重要な基本的注意」「重大な副作用」「その他の注意」の項に「急性近視、閉塞隅角緑内障、脈絡膜滲出」に関する記述を新設または追加する、ドパミン受容体拮抗薬のドンペリドン(ナウゼリン他)は妊婦禁忌を削除する、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)のエプレレノン(商品名セララ他)とトリアゾール系抗菌薬ボリコナゾール(ブイフェンド他)およびポサコナゾール(ノクサフィル)は併用禁忌とするよう求めている。その他、脊髄性筋萎縮症治療薬のオナセムノゲン アベパルボベク(ゾルゲンスマ)は「重要な基本的注意」「重大な副作用」の項に「Infusion reaction」に関する記述を新設するなどの改訂を指示している。(関連記事「妊婦禁忌ドンペリドンに催奇形性認められず」)

利尿薬:因果関係が否定できない症例が国内外で集積

 利尿薬については、欧米、カナダなど海外において、サイアザイド系利尿薬(サイアザイド類似利尿薬を含む)および炭酸脱水酵素阻害薬アセタゾラミド(商品名ダイアモックス)を含む利尿薬に関し、急性近視、閉塞隅角緑内障、脈絡膜滲出のリスク評価/措置が行われている。また、スルホンアミド構造を有する医薬品と眼障害リスクとの関連を示唆する報告(Qatar Med J 2015; 2015: 6)を踏まえ、スルホンアミド構造を有する炭酸脱水酵素阻害薬2製品〔アセタゾラミド、アセタゾラミドナトリウム(商品名ダイアモックス注射用)〕、サイアザイド系利尿薬・サイアザイド類似利尿薬5製品〔インダパミド(ナトリックス他)、メフルシド(バイカロン他)、ヒドロクロロチアジド(ヒドロクロロチアジド「トーワ」他)、ベンチルヒドロクロロチアジド(べハイド、販売終了)、トリクロルメチアジド(フルイトラン他)〕、ループ利尿薬3製品〔フロセミド(ラシックス他)、トラセミド(ルプラック他)、アドセミド(ダイアート他)〕、ARBおよびカルシウム拮抗薬との配合薬6製品〔カンデサルタンシレキセチル/ヒドロクロロチアジド(エカード他)、テルミサルタン/ヒドロクロロチアジド(ミコンビ他)、テルミサルタン/アムロジピンベシル酸塩/ヒドロクロロチアジド(ミカトリオ他)、バルサルタン/ヒドロクロロチアジド(コディオ他)、ロサルタン/ヒドロクロロチアジド(プレミネント他)、イルベサルタン/トリクロルメチアジド(イルトラ)〕に関する国内外の副作用症例、公表文献を評価した。

 その結果、国内ではインダパミドで2例(薬剤との関連が否定できない症例2例)、海外ではアセタゾラミドで5例(同5例)、インダパミドで10例(同4例)、フロセミドで4例(同2例)、ロサルタン/ヒドロクロロチアジドで1例(同0例)が集積された。いずれも死亡例はなかった。

 専門委員の意見も聴取した結果、①アセタゾラミド、アセタゾラミドナトリウム、インダパミドは「重要な基本的注意」「重大な副作用」の項に「急性近視、閉塞隅角緑内障、脈絡膜滲出」に関する記述を新設、②ヒドロクロロチアジド、カンデサルタンシレキセチル/ヒドロクロロチアジド、テルミサルタン/ヒドロクロロチアジド、テルミサルタン/アムロジピンベシル酸塩/ヒドロクロロチアジド、バルサルタン/ヒドロクロロチアジド)、ロサルタン/ヒドロクロロチアジドは「重要な基本的注意」の項に「急性近視、閉塞隅角緑内障、脈絡膜滲出」に関する注意を、「重大な副作用」の項には「脈絡膜滲出」に関する記述を新設、③メフルシド、ベンチルヒドロクロロチアジド、トリクロルメチアジド、イルベサルタン/トリクロルメチアジドは「その他の注意」の「臨床使用に基づく情報」の項に「他のサイアザイド系利尿薬で急性近視、閉塞隅角緑内障、脈絡膜滲出急性近視、閉塞隅角緑内障、脈絡膜滲出が現れたとの報告がある」旨を追記-することが適切と判断された。

 なおループ利尿薬3製品については、現時点で因果関係が否定できない症例はフロセミドで2例のみと限定されることから、使用上の注意の改訂は不要と判断された。

ドンペリドン:疫学研究、ガイドラインや海外添文を踏まえ禁忌解除

 ドンペリドンについては、現行、「妊婦または妊娠している可能性のある女性」は禁忌とされている。今回、医薬品医療機器総合機構(PMDA)が非臨床試験に基づく情報、臨床使用に基づく情報、国内外のガイドライン、海外添付文書の記載状況について検討した結果、①妊娠初期に同薬を使用した妊婦を対象とした疫学研究において、先天異常の発生率上昇との関連を示唆する結果は得られていない、②国内ガイドラインでは、妊娠初期のみ使用した場合、臨床的に有意な胎児への影響はないと判断してよい医薬品の一覧に同薬が記載されている、③海外添付文書(英国、カナダ、オーストラリア、フランス、ドイツ)において妊婦への使用は禁忌とされておらず、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合に投与すべきとされている-ことを踏まえ、妊婦禁忌の削除が適切と判断された。

エプレレノン:強力なCYP3A4阻害作用による血中濃度の上昇が懸念

 エプレレノンについては、ボリコナゾールまたはポサコナゾールとの併用時の薬物動態学的な影響および市販後安全性情報を評価した。その結果、①強力なCYP3A4阻害作用を有するケトコナゾールを併用した臨床薬物相互作用試験において、エプレレノンの曝露量〔血中濃度-時間曲線下面積(AUC)〕が約5.4倍に増加したことを踏まえ、ケトコナゾールと同程度のCYP3A4阻害作用を有する薬剤は併用禁忌とされている、②臨床薬物相互作用試験結果はないものの、ボリコナゾール/ポサコナゾールはCYP3A4を強力に阻害するため併用時にはエプレレノンの血中濃度が著しく上昇し、副作用発現リスクの上昇が懸念される-ことから、併用禁忌とすることが適切と判断された。

 一方、可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激薬リオシグアト(商品名アデムパス)については、現行のトリアゾール系抗菌薬イトラコナゾール(イトリゾール他)、ボリコナゾールとの「併用禁忌」を解除し、「併用注意」とされた。

オナセムノゲン アベパルボベク:Infusion reactionが海外で10例集積

 オナセムノゲン アベパルボベクについては、Infusion reaction関連症例を評価したところ、国内症例は1例(薬剤との関連が否定できない症例0例)だったものの、海外では10例(同8例)集積され、1例が死亡(同0例)した。専門委員会の意見も聴取した上で、「重要な基本的注意」「重大な副作用」の項に「Infusion reaction」に関する記述を新設することが適切と判断された。

 この他、第二世代ALK阻害薬セリチニブ(商品名ジカディア)とBCL-2蛋白阻害薬ベネトクラクス(ベネクレクスタ)の併用禁忌放射性医薬品ボロファラン(ステボロニン)の「重大な副作用」への「壊死、粘膜潰瘍、穿孔、瘻孔」の新設、抗IL-31受容体A抗体ネモリズマブ(ミチーガ)の「重大な副作用」への「類天疱瘡」の新設、X線造影剤イオジキサノール(ビジパーク)の「重要な基本的注意」「重大な副作用」への「心停止」の新設などが指示された。

 詳細は、厚労省の「医薬安発0520第1号」、「第2号」を参照されたい。

編集部・関根雄人

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