医薬品医療機器総合機構(PMDA)は本日(7月14日)、ヤンセンファーマおよび丸石製薬からの依頼により「レミフェンタニル塩酸塩の適正使用に関するお知らせ」を公式サイトに掲出。麻薬性鎮痛薬レミフェンタニル塩酸塩(商品名アルチバ静注用2mg、5mg、レミフェンタニル静注用2mg、5mg「第一三共」)を用いた無痛分娩(経静脈的自己調節鎮痛法:IV-PCA)について、適応外使用であるにもかかわらず、あたかも従来の硬膜外麻酔による無痛分娩よりも簡便かつ安全であるかのようにウェブサイトで紹介する産科クリニックなどが散見されるという。両社は、レミフェンタニルを用いた無痛分娩により母体および新生児に重大な副作用が生じた事例が報告されていることから、医療関係者に対し適正使用への協力を訴えている。 昨年10月には日本麻酔科学会が「不適切」と提言も 現在、国内で販売されているレミフェンタニルの効能効果は以下の通り。 ●アルチバ静注用2mg、5mg ○成人:全身麻酔の導入および維持における鎮痛 ○小児:全身麻酔の維持における鎮痛 ●レミフェンタニル静注用2mg、5mg「第一三共」 〇成人:全身麻酔の導入および維持における鎮痛 〇小児:全身麻酔の維持における鎮痛 〇集中治療における人工呼吸中の鎮痛 IV-PCAは、患者が専用の機器を操作して少量のオピオイドを自己投与する方法である。投与経路の確立が容易、効果発現が速やかといった利点がある一方で、全身麻酔または人工呼吸管理下での無痛分娩と比べ術後呼吸器合併症が比較的多い、消化管機能回復の遅延などの欠点があり(日本臨床麻酔学会誌 2010; 30: 676-682)、呼吸停止などの重大な医療事故につながる恐れもある。 しかし、最近一部の産科クリニックなどのウェブサイトにおいて、従来法よりも簡便かつ安全な無痛分娩法であると受け取れるような記載が散見されるという。こうした事態を踏まえ、日本麻酔科学会は昨年(2024年)10月1日付で「レミフェンタニルを用いた分娩時鎮痛に関する提言」を発表。全身麻酔用の麻薬性鎮痛薬であるレミフェンタニルは、強力な呼吸抑制・呼吸停止を引き起こすだけでなく、循環抑制作用も有する。したがって、安全性は十分なモニタリング、医療安全体制、設備および麻酔科医の監視下で行われる人工呼吸下全身麻酔でのみ保証されるものであるとして、「自発呼吸下の妊婦に対して分娩時の鎮痛目的でレミフェンタニルを投与することは不適切である」との見解を示した。 両社は、レミフェンタニルの製造・販売に責任を有する企業として、製品を使用する患者の安全を確保することが最重要とし、医療関係者に対し適正使用への協力を訴えている。 (編集部・関根雄人)