日本眼科学会は8月3日、血管内皮増殖因子(VEGF)阻害薬硝子体内注射前後の抗菌薬点眼処方について、日本網膜硝子体学会の硝子体内注射時の抗菌薬ワーキンググループがまとめた「抗菌薬点眼は原則不要であり、耐性菌の問題から抗菌薬は使用しないことが推奨される」などとする提言を公式サイトに掲出。会員向けに周知した。(関連記事「抗VEGF薬、プレフィルド製剤で眼内炎リスク低下」) 耐性菌の問題と、感染性眼内炎予防に対するエビデンス不足 VEGF阻害薬の硝子体内注射は、加齢黄斑変性や糖尿病網膜症、網膜静脈閉塞症などに対して行われ、病的な血管新生や血管漏出を引き起こすVEGFを阻害することで視力の維持・改善が期待できる治療法。視覚障害につながる難治性疾患の転帰を大きく改善できるため、国内では施行数が増加傾向にある。 これまで、多くのVEGF阻害薬の添付文書には、硝子体内注射前後における抗菌薬点眼の投与が記載されていた。しかし近年、抗菌薬使用による耐性菌の問題および、抗菌薬点眼により感染性眼内炎を予防できるエビデンスの不足が指摘されている。 こうした背景の下、海外のガイドラインでは既に、通常の患者においてはVEGF阻害薬硝子体内注射前後の抗菌薬を使用しないことが推奨されている。VEGF阻害薬硝子体内注射の施行ごとに抗菌薬を点眼された患者の結膜囊および鼻粘膜常在菌は耐性を獲得しやすいとの報告や、術後眼内炎予防には抗菌薬投与ではなく術直前のヨード洗浄が有効との指摘もある。 以上を踏まえ、日本網膜硝子体学会ではVEGF阻害薬硝子体内注射前後の抗菌薬点眼処方について以下のように推奨している。 1.注射前の適切な消毒および推奨されている注射手順を守る(日本眼科学会雑誌 2016; 120: 87-90『黄斑疾患に対する硝子体内注射ガイドライン』参照) 2.通常の患者(感染症のリスクが高くない患者)には注射前後の抗菌薬点眼を使用しなくてもよい(1を遵守していれば抗菌薬点眼は原則不要であり、耐性菌の問題から抗菌薬は使用しないことが推奨される) 詳細は、日本眼科学会および日本網膜硝子体学会の公式サイトを確認されたい。 (編集部・小暮秀和)