JDDW 2025:分子生物学に基づく確度の高い医療を

第67回日本消化器病学会大会 会長
山形大学 内科学第二教室(消化器内科学)教授

上野 義之 氏

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感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ

 消化器病学は、その歴史において形態学を中心に発展してきました。しかし、近年では疾患の背景にある分子基盤の解明が急速に進み、プレシジョン・メディシンの実現に向けた研究が活発化しています。JDDW 2025では、この「分子生物学に基づく確度の高い医療」を主要なテーマの1つとして掲げ、関連するセッションを多数企画しています。

 JDDWは、消化器関連の5学会が集結することにより、1つの領域について幅広い視点から議論を展開できる場です。例えば、通常の学会では扱いにくい希少がんも、JDDWだからこそ1つのセッションとして成立させることができます。今回の大会では、このような特色を最大限に生かすため、多岐にわたるテーマを設定しました。参加者に新たな知見と議論の機会を提供できると確信しています。

 今回、Strategic International Sessionでは「消化器病領域における幹細胞生物学と再生医療」を企画しました。幹細胞移植は、網膜や心筋などある程度機能が限定された臓器において現実味を帯びてきていますが、消化器領域においてはいまだ課題が多く、実用化には距離があるのが現状です。このセッションでは、消化器における幹細胞移植の現状と課題を各分野の専門家が持ち寄り、その距離を乗り越えるために何をすべきかを多角的に議論します。

 統合プログラム「ゲノム時代の内科学・外科学―消化器疾患とゲノム診療の未来」では、旧来の「内科」と「外科」の枠組みを超え、ゲノム情報というより大きな視点から消化器医療の未来について議論します。特別講演・招待講演では、国内外の著名な研究者を招聘し、最新の知見を共有します。Mayo ClinicのGregory J. Gores先生からは、肝臓がんに対する分子生物学的なアプローチについて、同院のTushar Patel先生からは、micro RNAなどの低分子を介したがん研究の現状についてご講演いただきます。

 また近年、潰瘍性大腸炎やクローン病といった炎症性腸疾患(IBD)は、治療選択肢が大幅に広がっています。International sessionでは、西洋と東洋の専門家が「選択肢が増えたIBD治療の現状と今後の展開」と題し、IBD治療の最新動向と将来の展望について議論します。

 「膵癌の早期診断・早期治療」と題したシンポジウムも注目です。膵がんは予後不良であることが知られていますが、早期に発見できれば5年生存も十分に期待できることが分かってきました。このセッションでは、膵がんの早期診断が期待される技術や、早期発見時の治療選択肢について内科と外科の視点から深く掘り下げます。

 JDDWは広大な会場で多数のセッションが同時開催されます。最先端の治療法が紹介される活気あるセッションもあれば、希少疾患など特定の領域について第一人者から直接学べる貴重なセッションもあります。会場に来られる方は、ぜひ積極的に会場を巡り、新たな発見と出会いを体験してください。また、オンライン参加の方も自宅から多数のプログラムを視聴できますので、ご自身のペースで学会を存分にお楽しみいただけます。皆様にとって実り多い大会となるよう、運営一同、心よりお待ちしております。

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