JDDW 2025:ロボット手術が開く消化器外科の未来、新たな医療へ

第23回日本消化器外科学会大会 会長
名古屋市立大学大学院消化器外科学 主任教授

瀧口 修司 氏

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 消化器外科領域の治療において、ロボット支援手術や人工知能(AI)などさまざまな形での技術革新が進んでいます。今後は、両者をマッチさせた形での新たな医療の追求が本格化するでしょう。消化器疾患に関わる5学会が一堂に会するJDDW 2025では、通常の学会総会とは一味違うセッションが組まれています。日本消化器外科学会でも「ロボット手術が開く消化器外科の未来」をキーワードに、消化器外科領域における世界の現状と将来展望などの魅力あるセッションを複数企画しました。

 招待講演では、アジアにおけるロボット手術の現状を広く知っていただきたいとの思いからベトナム、韓国、台湾の先生方をお招きします。ベトナムからは国立がんセンターにおけるがん治療の現状と将来展望、韓国からは胃がん治療の現状、そして台湾からは膵頭十二指腸切除術についてご講演いただきます。アジアのロボット手術を牽引するエキスパートの話を聞ける貴重な機会になるでしょう。

 Strategic International Session「ロボット手術の未来」は米国消化管外科学会(SSAT)との共同シンポジウムで、米国から2氏、日本から2氏のエキスパートをお迎えし、両国のロボット手術の現状と今後の方向性についてお話しいただきます。このセッションを聞けば、ロボット手術が今後どのように発展していくのか、世界の潮流が見えてくるのではないでしょうか。

 また、ロボット手術の件数が増加してきた昨今、今度はその手技を若手にどのように伝えていくかも重要なテーマとなります。シンポジウム13では「消化管癌に対するロボット手術の若手教育」を企画しています。

 日本消化器外科学会が主導する特別講演は、「研究と臨床の卓越した二刀流医師になるために」と「臨床と基礎の融合」の2つです。働き方改革が本格的に始動し、消化器外科に限らずどの診療科も取り巻く環境が厳しさを増す中、病院のかじ取りは一段と難しくなっています。「研究と臨床の卓越した二刀流医師になるために」では、郡健二郎先生に厳しい環境を打開する病院経営の知恵と工夫についてお話しいただきます。病院経営の安定化と魅力ある病院づくりのために何をすべきなのか―。その指針をお示しいただけるのではないかと期待しています。「臨床と基礎の融合」では、両者の融合における将来展望を森正樹先生にご講演いただきます。聴講した先生方に、臨床と基礎の融合の在り方について再認識していただきたいとの思いから企画しました。

 統合プログラムでは、「消化器がんに対するConversion surgery(外科治療介入)の現状と課題」を企画しました。conversion surgeryは、化学療法奏効例に対し外科的切除を施行して治療成績を上げていく治療法です。薬物治療の進展で、外科治療はどこまで介入可能になるのか。本プログラムは、内科の先生方にとっても現在のconversion surgeryにおける内科治療の在り方を知る良い機会となるでしょう。

 パネルディスカッション11「局所進行直腸癌に対する術前治療の功罪」は非常にホットな話題です。局所進行直腸がんへの術前治療は欧米では標準治療ですが、日本では予後改善効果が明らかでなく、治療に伴う合併症が課題とされています。このテーマは、常に知識をアップデートしていただきたいです。

 JDDWは消化器疾患の診療に携わる内科医、外科医が集結する大会です。今回日本消化器外科学会で企画したセッションは、ロボットがどこまで手術に入り込んでいくかなど、内科系の先生方にも比較的興味を持っていただけるテーマですので、内科・外科を問わず多くの先生方に聴講していただき、活発なご討議をお願いしたいです。また、外科系の先生方には、専門以外のセッションも積極的に聴講してほしいと思っています。

 現地では時間が重なり聴講できない複数のセッションも、オンラインであれば聴講可能です。また、例えば現地では専門外のセッションを、オンラインでは専門のセッションを聴講するのも1つの方法でしょう。ぜひ、JDDW全体を大いに活用していただきたいと思います。

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