JDDW 2025:日本独自の発展を遂げた舞台で活躍してほしい

日本消化器関連学会機構(Organization of JDDW) 理事長
関東中央病院 病院長

小池 和彦 氏

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感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ

小池 和彦 氏

―コロナ禍を乗り越えた今、JDDWの意義と発展についてお聞かせください。

 消化器病領域は、上部・下部消化管、肝、胆、膵と幅広い臓器が対象で、かつ診療には内科系・外科系の両者が関わります。そのため、5学会が参集する日本消化器関連学会週間(JDDW)は、異なる領域や多様な分野の医師が診療科の枠を超え、同じ会場で議論を交わすという貴重な場として、開催のたびに大きな意義を感じています。

 JDDWは国際化も着実に進んでいます。特に肝疾患領域では米国肝臓学会(AASLD)、欧州肝臓学会(EASL)との連携が続いており、国際的な視点での議論が活発です。米国消化器病週間(DDW)を参考に始まったJDDWですが、今年(2025年)で33回目を迎え、米国とは異なる日本独自の発展を遂げてきています。

 コロナ禍を経て、JDDWでは現地会場とウェブ配信というハイブリッド開催を定着させてきました。昨年(JDDW 2024)は2万4,000人を超える参加登録があり、オンデマンド配信を含むハイブリッド開催は、地理的・時間的な制約で現地参加が難しい医師や若手医師の参加ハードルを下げ、多くの参加が実現していると思います。コロナの収束以降、学術集会のウェブ開催は縮小傾向にありますが、JDDWにはハイブリッド開催が欠かせない方式として、これからも継続したいと考えています。

──近年、社会的に女性の活躍やAIへの関心が高まっています。JDDWではどうでしょうか?

 ここ数年、JDDWでは女性医師や若手医師のキャリア支援に力を入れてきました。毎年女性医師・研究者プログラムを設けており、今年は「学会における年代別キャリアプランを探る!」をテーマに過去最多の12講演が企画されており、女性医師をはじめ、さまざまな立場の医師や研究者がそれぞれのキャリア形成について紹介するので、若手医師にはとても参考になると思います。

 人工知能(AI)については、JDDWでも身近な存在になっています。内視鏡診断や放射線診断などの画像診断支援、がん治療における遺伝子解析、さらには総合診療支援など、多様な場面でAIの活用が進められており、医師とAIが協働する"Co-Working"の時代に入っていると実感しています。診療以外では、特に若手医師において英語論文の作成などに生成AIの活用が急速に広がっています。

―JDDW 2025も充実したセッションが多数予定されています。セッションの魅力について教えてください。

 国際交流としては、日本消化器外科学会主導のStrategic International Session「ロボット手術の未来」と題した国際的なセッションが開かれます。米国などの先進事例を学べる、非常に興味深い場になると期待しています。また肝臓領域では、昨年に続きMASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)/MASH(代謝機能障害関連脂肪肝炎)に関連するテーマとして、代謝機能障害アルコール関連肝疾患(MetALD)について議論する日本肝臓学会とAASLDのジョイントセッション「MetALDの臨床像とマネジメント」が予定されており、飲酒がMASLD/MASHに及ぼす影響ついて最新のデータが示されると思います。

 内科と外科の協働という点では、統合プログラムの1つ「消化器がんに対するConversion surgeryの現状と課題」が注目されます。免疫療法などの進歩により、従来は手術不可能だった症例でも、内科的治療と外科的治療を組み合わせることで治癒が見込めるようになってきました。その他、近年研究が成熟してきた腸内細菌研究やゲノム時代の内科学・外科学といったテーマも見逃せません。

 また、消化器病診療には、内科・外科の医師だけでなく多職種が関わることから、今年は2つのメディカルスタッフプログラム「超高齢社会における多職種連携の重要性と実践」と「消化器領域におけるNP(Nurse Practitioner)/PA(Physician Assistant)の育成」が企画されています。日常臨床での多職種連携やタスクシフトに取り組む上で、参考になると思います。

―最後に、参加者に向けてメッセージをお願いします。

 昨年は8,000人以上が現地に来場し、会場は大いに盛り上がりました。ぜひこの熱気を味わっていただける、現地での参加をお勧めします。ご自身の発表がなくても、現地に足を運んで、会場の活気ある雰囲気を肌で感じてください。そして、質疑に加わることで、単なる参加を超え、JDDWという舞台で"活躍"していただきたいです。特に若手医師には、学会での質疑応答は大きな成功体験となって、医師としての自信と成長につながると思います。

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