進化する褥瘡テクノロジーの最前線

第27回日本褥瘡学会・展示ブース

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感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ

 2025年8月29~30日、パシフィコ横浜で第27回日本褥瘡学会が開催された。企業展示ブースでは、日常的な予防から管理、治療、さらには医療者の働き方改革まで、褥瘡診療に関する最新テクノロジーが一堂に会し、多くの参加者で賑わいを見せた。

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患者さんが「心地良い」と感じる製品を

 褥瘡診療において栄養管理は不可欠な要素である。栄養療法食品を手がけるニュートリーは、コラーゲンペプチド配合飲料「ブイ・クレスCP10」を紹介。1本125mLという少量でコラーゲンペプチド10g、蛋白質12gを摂取できる。消費者庁から特別用途食品「個別評価型 病者用食品」の表示許可を取得しており、褥瘡の食事療法として使用できる。

 体圧分散用具の分野では、患者のQOL向上とケアの効率化を目指した製品開発が進んでいる。医療・福祉機器を製造・販売するモルテンは、全自動運転と体圧可視化機能を備えたロボティックマットレス「スコープ」や、車椅子用クッション「Power Cushion」を展示。担当者からは「さらに研究を重ねて機能を向上させ、患者さんが"心地良い"と感じる製品をつくっていきたい」といった声が聞かれた。

 介護・福祉用品メーカーのタイカが昨年発売した自動体位変換機能付きマットレス「αPLA NE-AUTO」も注目を集めた。体位変換の角度や頻度が睡眠の質を下げないよう設計されており、ケアの自動化と患者の安眠に寄与する。

 医療用寝具メーカーのオムニ商会は衛生面を追求したマットレス「オムニマット」「オムニマット フォレス」を展示。感染対策を考慮し、内部のカセットまで丸洗いが可能。最近では、洗濯可能な素材を追求して体位変換クッション「おむみん」も開発された。

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在宅でのNPWTシステムに注目

 治療については、入院から在宅まで対応できるソリューションが注目を集めた。スミス・アンド・ネフューのブースでは、入院・外来・在宅で使用可能な局所陰圧閉鎖療法(NPWT)用の創傷治療システム「PICO 7」が関心を集めていた。独自の技術で創傷全体に均一かつ安定した陰圧(−80mmHg)を持続的に提供し、治癒を促進する。

 なお、治療で用いるドレッシング材については、メンリッケヘルスケアの「メピレックス ボーダー プロテクト」「メピレックス ボーダー Ag」が交換時の患者の痛みと組織損傷を軽減する技術として好評を得ていた。

 ロート製薬は、今年1月に発売した難治性創傷に対する多血小板血漿(PRP)療法ソリューション「Autolo Gel SYSTEM」を紹介。患者自身の血液から分離したPRPをゲル化して患部に塗布する。新たな選択肢として大きな関心を集めていた。

日々のスキンケアに最新の「保湿」と「保護」

 スキンケア領域では、皮膚のバリア機能に着目した製品が目立った。持田ヘルスケアのブースでは、今年9月に発売されたばかりの「コラージュフルフル」シリーズの保湿ジェルが、肌なじみの良さと高い保湿力で「使用感が良い」と話題に。

 第一三共ヘルスケアの「ミノン」シリーズは、乳幼児から高齢者まで使える設計が改めて評価されていた。匂いに敏感な患者にも配慮した無香料の製品は、療養環境におけるスキンケアの基本として根強い人気を誇っているという。

DXで褥瘡の診療業務を効率化

 医療DXは、褥瘡診療の分野でも加速している。ゼロシステムが提供する褥瘡管理システム「ZERO Pulcer」は、日々の状態管理から書類作成までの煩雑な業務を大幅に軽減する。電子カルテと連携可能で、スマートフォンで撮影した創部画像もそのまま記録できる。導入施設からは「残業時間が大幅に削減できた」という声が聞かれるという。

 ボイットは、医療従事者の円滑なコミュニケーションを支援するインカム「VOYT CONNECT」を紹介。スマートフォンで専用アプリと連携させることで、クリアな音声での情報共有を実現する。移動が多く多忙なスタッフのために、特定のメンバーで会話できるグルーピング機能や、音声をテキスト化する文字起こし機能も搭載。「介護テクノロジー導入支援事業(ICT補助金)」の対象である点も導入を後押しする要因となっているという。

(第27回日本褥瘡学会取材班)

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