B型肝炎における残された課題とその対策 2025年10月30日 05:30 参考になった 名の医師が参考になったと回答 記事をクリップ 記事をクリップして、あとでマイページから読むことができます Facebookでシェアする Xでシェアする Lineでシェアする シンポジウム4(日本肝臓学会・日本消化器病学会・日本消化器がん検診学会) 10月30日(木) 9:30〜12:00 第4会場(神戸ポートピアホテル南館 ポートピアホール) [司会] 四柳 宏 氏 国立健康危機管理研究機構 田中 靖人 氏 熊本大大学院・消化器内科学 [演者] 佐竹 正博 氏 日本赤十字社・血液事業本部 奥新 和也 氏 東京大附属病院・感染制御部 杉本 理恵 氏 国立九州がんセンター・消化器・肝胆膵内科 盛田 篤広 氏 京都第二赤十字病院・消化器内科 鈴木 孝典 氏 名古屋市立大・消化器・代謝内科 由雄 祥代 氏 国立健康危機管理研究機構・免疫病態研究部 渡邊 丈久 氏 熊本大大学院・消化器内科学 熊田 卓 氏 岐阜協立大 保坂 哲也 氏 虎の門病院・肝臓センター 村井 一裕 氏 大阪大大学院・消化器内科学 河内 瑞季 氏 三重大附属病院・消化器・肝臓内科 八橋 弘 氏 長崎県病院企業団 B型肝炎については、核酸アナログ(NA)製剤の普及やワクチン接種の導入により治療は大きく進歩したが、functional cure(HBs抗原消失)未達成やNA長期投与下での肝臓がんの発症など、いまだ課題は多い。司会の田中靖人氏は、「世界には今も2.5億人を超えるB型肝炎ウイルス(HBV)のキャリアが存在し、高齢化に伴う多臓器がんや免疫関連合併症など新たな問題も増えている。本セッションでは、疫学・病態・治療・予防の各分野から未解決の課題を幅広く議論し、今後の研究と診療の方向性を共有したい」と語る。 前半は予防、後半は治療 田中氏は「JDDWには、肝臓専門医だけでなく広く消化器内科を中心とした医師が参加するため、演題は基礎が少なく臨床寄りとなっている」と話す。セッションの構成は前半が予防、後半は治療についてに分けられる。最初の演題は不顕性感染の現状で、佐竹正博氏は頻回献血者の追跡調査より得られたHBV感染の状況を報告し、届出数を大きく上回る不顕性感染の存在を明らかにする。2演題目は届出感染症である急性B型肝炎を扱っており、奥新和也氏が急性B型肝炎の地域特性を解析し、人口密集地での若年女性の高リスクを提示する。 臨床現場で注目されるHBVの再活性化については、杉本理恵氏が免疫チェックポイント阻害薬(ICI)使用時のリスク、盛田篤広氏がICIや生物学的製剤の投与例などでの再活性化について報告する。また、鈴木孝典氏はHBコア関連抗原の新規定量法を紹介し、個別化診療への展開を示唆。由雄祥代氏はPreS1抗体によるウイルス制御の可能性を提示し、渡邊丈久氏はRNA結合蛋白質を介したHBs抗原制御という新たな分子機構を明らかにする。 さらに、熊田卓氏はNA治療例におけるHBVRNA測定のマーカーとしての有用性、保坂哲也氏は長期NA投与例での発がんリスク因子の変化、村井一裕氏は新規予測マーカーの探索、河内瑞季氏はNA投与下の高度線維化例の肝細胞がんリスク層別化について報告する。最後に特別発言として、八橋弘氏がB型肝炎の現状の課題についての意見を示す。田中氏は「今回は創薬に関する話題はあまりないが、RNA結合蛋白質を介したHBs抗原産生の新規調節機構については、今後の創薬につながる新しい話題になるだろう」と述べる。 今後のB型肝炎診療の参考に 田中氏は「2016年に0歳児に対するHBVワクチンの定期接種が開始され、現在急性B型肝炎に罹患するのはワクチン未接種の世代になる」と指摘する。思春期世代は性行為でHBVに感染することが多く、感染者自体は減少傾向にあるが、発症者の3倍ともいわれる不顕性感染者の問題もある。不顕性感染者は、体内に残るHBVが再活性化するリスクを背負っているといえ、さらに50歳以上になると肝がんの発症リスクが高くなる。同氏は「ワクチンの接種による予防は極めて重要だが、30歳を超えると免疫を獲得しづらくなるため、若年期に接種してほしい。これは世界保健機関(WHO)の戦略でもある」と強く啓発する。 同氏は「本セッションは、新規バイオマーカーをはじめ診療の参考になる興味深い話題が充実している。今後のB型肝炎診療の展望を描く上で重要な機会になると思うので、ぜひ参加いただきたい」と呼びかける。 ※本記事の内容は取材時点での情報です。当日に変更となる場合があります。 MTウェブ JDDW2025 TOP JDDW2025 公式サイト 第68回日本消化器病学会大会 [会長]海野 倫明 東北大学大学院 消化器外科学 第112回日本消化器内視鏡学会総会 [会長]石原 立 大阪国際がんセンター 消化管内科 第30回日本肝臓学会大会 [会長]波多野 悦朗 京都大学大学院 肝胆膵・移植外科 第24回日本消化器外科学会大会 [会長]上野 秀樹 防衛医科大学校 外科 第64回日本消化器がん検診学会大会 [会長]三上 達也 弘前大学大学院 先制医療学 参考になった 名の医師が参考になったと回答 記事をクリップ 記事をクリップして、あとでマイページから読むことができます … 続きを読むにはログイン 無料でいますぐ会員登録を行う ご利用無料、14.5万人の医師が利用 医学・医療の最新ニュースを毎日お届け ギフト券に交換可能なポイントプログラム 独自の特集・連載、学会レポートなど充実のコンテンツ \ 60秒でかんたん登録 / 医師の会員登録 ログイン(すでに会員の方) >その他の医療関係者はこちらから Facebookでシェアする Xでシェアする Lineでシェアする × 関連記事 おすすめセッション動画 大会長 竹原 徹郎 先生 第29回日本肝臓学会大会会長の竹原徹郎先生は、肝がんにおける... 2025/10/30 05:30:00 おすすめセッション動画 大会長 岡庭 信司 先生 第63回日本消化器がん検診学会会長の岡庭信司先生は、膵がんの検診・診断に注目。遺伝性腫瘍性症候... 2025/10/30 05:30:00 希少悪性腫瘍治療の現状と展望 統合プログラム2(S) (JDDW・日本消化器外科学会・日本消化器病学会・日本消化器内視鏡学会・... 2025/10/30 05:30:00 大腸がん検診における適切な高危険群の設定と管理 パネルディスカッション5 (日本消化器がん検診学会・日本消化器病学会・日本消化器内視鏡学会・日本... 2025/10/30 05:30:00 最新記事一覧を見る コメント一覧(件) 人気順 新着順 ※ コメントはログイン後に閲覧できます(医師会員のみ) ※ コメントはログイン後に閲覧できます
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