膵癌の早期診断・早期治療 2025年10月30日 05:30 参考になった 名の医師が参考になったと回答 記事をクリップ 記事をクリップして、あとでマイページから読むことができます Facebookでシェアする Xでシェアする Lineでシェアする シンポジウム1(日本消化器病学会・日本消化器内視鏡学会・日本消化器外科学会・日本消化器がん検診学会) 10月30日(木)9:30~11:30 第1会場(神戸国際展示場2号館 ホール北) [司会] 北野 雅之 氏 和歌山県立医大・2内科 正宗 淳 氏 東北大大学院・消化器病態学 [演者] 林 伸彦 氏 富山大・3内科 河瀬 智哉 氏 川崎医大・消化器内科 川路 祐輝 氏 和歌山県立医大・2内科 三浦 晋 氏 東北大・消化器内科 佐々木 雅隆 氏 名古屋大大学院・消化器内科学 原井 正太 氏 国立がん研究センター中央病院・肝胆膵内科 川本 裕介 氏 東京女子医大・消化器・一般外科 仲程 純 氏 がん・感染症センター都立駒込病院・消化器内科 2023年に膵がんの死亡数は胃がんを上回り、日本人の死因で第3位となった。依然5年生存率は約1割と極めて低く、消化器領域で最も難治性のがんの1つとされる。本セッションでは、予後改善のために欠かせない「いかに早期に診断するか」「どのように治療法を進化させるか」という膵がん診療の2つの柱に関し、最新の知見と課題が議論される。司会の正宗淳氏は「多数の応募演題から厳選された8演題が発表される。各演者には十分な講演時間が確保されており、今後の早期診断、早期治療の実現に向け、希望を感じることができる発表をじっくり聞き、議論を深めてほしい」と述べる。 バイオマーカーから画像・病理診断、外科治療まで幅広く網羅 本セッションでは、早期診断に直結する新規バイオマーカーの探索をはじめ、最新の画像診断技術、病理診断、外科治療、補助化学療法まで、診断から治療の全体像を俯瞰できる構成となっている。これまでは少数例や単施設での報告に限られていたが、多施設での共同研究や、単施設ながら大規模データに基づく検証結果が提示される。 日常臨床で使われているCA19-9やアポリポ蛋白A2アイソフォームといった従来の腫瘍マーカーには、早期膵がんや小さな病変などの検出において課題がある。バイオマーカーの探索においては、高リスク群から膵がん発症者を的確に見分けられるかが大きな焦点となる。林伸彦氏は血清ペプチドに着目し、診断精度を高める複数のペプチドを組み合わせた新規リスク・インデックスの作成を試み、探索群で感度71%、検証群で76.5%と良好な結果を得られたことを報告。また、河瀬智哉氏は侵襲性の低い尿検体を用い、将来的に検診への応用が期待される尿中マイクロRNA(miRNA)を活用した新規診断法を紹介する。 画像診断に関する3演題では、CTを中心とした新たな視点が提供される。川路祐輝氏は画像解析ソフトを用いて膵臓の体積を数値化し、客観的に経時的変化を評価した成果を示す。肝臓の萎縮という定性的所見を定量化できる点が特徴だ。三浦晋氏は多施設共同研究により、膵臓の局所的なくびれが早期診断に有効であることを報告する。登録時点で全症例のうち約4分の1に膵がんが確認され、その大半が早期であった事実は本研究のインパクトの大きさを物語る。佐々木雅隆氏は、新たな間接所見として「膵がん周囲の淡い造影効果増強」に注目し、既知の所見と組み合わせることで診断精度の向上が期待されることを提示。今後の共同研究にもつながる可能性がある。 膵がんの診断確定には病理検査が欠かせない。原井正太氏は、超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)の有用性を検証し、1cm未満の病変での診断精度は94.4%と高く、微小膵がんでも安全かつ高精度に診断できるという、臨床的に極めて意義深い結果を示す。 膵がんは、初発とは異なる部位で新規に発生することがあり、至適な切除範囲の決定や残膵のフォローアップが重要となる。外科領域では、川本裕介氏が膵全摘症例の詳細な解析に基づき、多中心性発がんを考慮した切除範囲の最適化を検討、今後の手術戦略に大きな示唆を与える報告をする。 進行膵がんに対する術前補助化学療法(NAC)は生存期間の延長が証明され、ガイドラインでも推奨されているが、早期膵がん例での有効性は未確立である。仲程純氏は、早期膵がんに対するNACの効果を後ろ向きに検証し、早期例におけるNACの適応の要否について、臨床現場が求める答えにつながる研究結果を示す。 正宗氏は「膵がんは臨床上のアンメットニーズが最も大きい領域の1つ。バイオマーカー、画像診断、病理診断、外科、化学療法と多方面からの取り組みが紹介される本セッションでは、膵がん診療の未来像を具体的にイメージしていただけるだろう」と参加を呼びかける。 ※本記事の内容は取材時点での情報に基づいており、当日の発表内容は変更となる可能性があります。 MTウェブJDDW2025 TOP JDDW2025公式サイト 第68回日本消化器病学会大会 [会長]海野 倫明東北大学大学院 消化器外科学 第112回日本消化器内視鏡学会総会 [会長]石原 立大阪国際がんセンター 消化管内科 第30回日本肝臓学会大会 [会長]波多野 悦朗京都大学大学院 肝胆膵・移植外科 第24回日本消化器外科学会大会 [会長]上野 秀樹防衛医科大学校 外科 第64回日本消化器がん検診学会大会 [会長]三上 達也弘前大学大学院 先制医療学 参考になった 名の医師が参考になったと回答 記事をクリップ 記事をクリップして、あとでマイページから読むことができます … 続きを読むにはログイン 無料でいますぐ会員登録を行う ご利用無料、14.5万人の医師が利用 医学・医療の最新ニュースを毎日お届け ギフト券に交換可能なポイントプログラム 独自の特集・連載、学会レポートなど充実のコンテンツ \ 60秒でかんたん登録 / 医師の会員登録 ログイン(すでに会員の方) >その他の医療関係者はこちらから Facebookでシェアする Xでシェアする Lineでシェアする × 関連記事 おすすめセッション動画 大会長 竹原 徹郎 先生 第29回日本肝臓学会大会会長の竹原徹郎先生は、肝がんにおける... 2025/10/30 05:30:00 おすすめセッション動画 大会長 岡庭 信司 先生 第63回日本消化器がん検診学会会長の岡庭信司先生は、膵がんの検診・診断に注目。遺伝性腫瘍性症候... 2025/10/30 05:30:00 B型肝炎における残された課題とその対策 シンポジウム4(日本肝臓学会・日本消化器病学会・日本消化器がん検診学会)10月30日(木) 9:... 2025/10/30 05:30:00 希少悪性腫瘍治療の現状と展望 統合プログラム2(S) (JDDW・日本消化器外科学会・日本消化器病学会・日本消化器内視鏡学会・... 2025/10/30 05:30:00 大腸がん検診における適切な高危険群の設定と管理 パネルディスカッション5 (日本消化器がん検診学会・日本消化器病学会・日本消化器内視鏡学会・日本... 2025/10/30 05:30:00 最新記事一覧を見る コメント一覧(件) 人気順 新着順 ※ コメントはログイン後に閲覧できます(医師会員のみ) ※ コメントはログイン後に閲覧できます
シンポジウム1(日本消化器病学会・日本消化器内視鏡学会・日本消化器外科学会・日本消化器がん検診学会) 10月30日(木)9:30~11:30 第1会場(神戸国際展示場2号館 ホール北) [司会] 北野 雅之 氏 和歌山県立医大・2内科 正宗 淳 氏 東北大大学院・消化器病態学 [演者] 林 伸彦 氏 富山大・3内科 河瀬 智哉 氏 川崎医大・消化器内科 川路 祐輝 氏 和歌山県立医大・2内科 三浦 晋 氏 東北大・消化器内科 佐々木 雅隆 氏 名古屋大大学院・消化器内科学 原井 正太 氏 国立がん研究センター中央病院・肝胆膵内科 川本 裕介 氏 東京女子医大・消化器・一般外科 仲程 純 氏 がん・感染症センター都立駒込病院・消化器内科 2023年に膵がんの死亡数は胃がんを上回り、日本人の死因で第3位となった。依然5年生存率は約1割と極めて低く、消化器領域で最も難治性のがんの1つとされる。本セッションでは、予後改善のために欠かせない「いかに早期に診断するか」「どのように治療法を進化させるか」という膵がん診療の2つの柱に関し、最新の知見と課題が議論される。司会の正宗淳氏は「多数の応募演題から厳選された8演題が発表される。各演者には十分な講演時間が確保されており、今後の早期診断、早期治療の実現に向け、希望を感じることができる発表をじっくり聞き、議論を深めてほしい」と述べる。 バイオマーカーから画像・病理診断、外科治療まで幅広く網羅 本セッションでは、早期診断に直結する新規バイオマーカーの探索をはじめ、最新の画像診断技術、病理診断、外科治療、補助化学療法まで、診断から治療の全体像を俯瞰できる構成となっている。これまでは少数例や単施設での報告に限られていたが、多施設での共同研究や、単施設ながら大規模データに基づく検証結果が提示される。 日常臨床で使われているCA19-9やアポリポ蛋白A2アイソフォームといった従来の腫瘍マーカーには、早期膵がんや小さな病変などの検出において課題がある。バイオマーカーの探索においては、高リスク群から膵がん発症者を的確に見分けられるかが大きな焦点となる。林伸彦氏は血清ペプチドに着目し、診断精度を高める複数のペプチドを組み合わせた新規リスク・インデックスの作成を試み、探索群で感度71%、検証群で76.5%と良好な結果を得られたことを報告。また、河瀬智哉氏は侵襲性の低い尿検体を用い、将来的に検診への応用が期待される尿中マイクロRNA(miRNA)を活用した新規診断法を紹介する。 画像診断に関する3演題では、CTを中心とした新たな視点が提供される。川路祐輝氏は画像解析ソフトを用いて膵臓の体積を数値化し、客観的に経時的変化を評価した成果を示す。肝臓の萎縮という定性的所見を定量化できる点が特徴だ。三浦晋氏は多施設共同研究により、膵臓の局所的なくびれが早期診断に有効であることを報告する。登録時点で全症例のうち約4分の1に膵がんが確認され、その大半が早期であった事実は本研究のインパクトの大きさを物語る。佐々木雅隆氏は、新たな間接所見として「膵がん周囲の淡い造影効果増強」に注目し、既知の所見と組み合わせることで診断精度の向上が期待されることを提示。今後の共同研究にもつながる可能性がある。 膵がんの診断確定には病理検査が欠かせない。原井正太氏は、超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)の有用性を検証し、1cm未満の病変での診断精度は94.4%と高く、微小膵がんでも安全かつ高精度に診断できるという、臨床的に極めて意義深い結果を示す。 膵がんは、初発とは異なる部位で新規に発生することがあり、至適な切除範囲の決定や残膵のフォローアップが重要となる。外科領域では、川本裕介氏が膵全摘症例の詳細な解析に基づき、多中心性発がんを考慮した切除範囲の最適化を検討、今後の手術戦略に大きな示唆を与える報告をする。 進行膵がんに対する術前補助化学療法(NAC)は生存期間の延長が証明され、ガイドラインでも推奨されているが、早期膵がん例での有効性は未確立である。仲程純氏は、早期膵がんに対するNACの効果を後ろ向きに検証し、早期例におけるNACの適応の要否について、臨床現場が求める答えにつながる研究結果を示す。 正宗氏は「膵がんは臨床上のアンメットニーズが最も大きい領域の1つ。バイオマーカー、画像診断、病理診断、外科、化学療法と多方面からの取り組みが紹介される本セッションでは、膵がん診療の未来像を具体的にイメージしていただけるだろう」と参加を呼びかける。 ※本記事の内容は取材時点での情報に基づいており、当日の発表内容は変更となる可能性があります。 MTウェブJDDW2025 TOP JDDW2025公式サイト 第68回日本消化器病学会大会 [会長]海野 倫明東北大学大学院 消化器外科学 第112回日本消化器内視鏡学会総会 [会長]石原 立大阪国際がんセンター 消化管内科 第30回日本肝臓学会大会 [会長]波多野 悦朗京都大学大学院 肝胆膵・移植外科 第24回日本消化器外科学会大会 [会長]上野 秀樹防衛医科大学校 外科 第64回日本消化器がん検診学会大会 [会長]三上 達也弘前大学大学院 先制医療学