微細な刺激で誘発される咳過敏症、認知率は3割

1万人超を対象とした実態調査で判明

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感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ

 朝晩の寒暖差が大きく、空気が乾燥し始める秋から冬にかけては、長引く咳に悩む人が増える傾向にある。杏林製薬は、1年以内に咳が長引いた経験がある1万人超を対象にアンケートを実施。微細な刺激で強い咳が誘発される咳過敏症(CHS)について、「知っている・聞いたことがある」と回答した割合は約3割にとどまり、認知度には医療機関受診の有無の影響が大きいことが明らかになったと発表した。(関連記事「長引く咳に潜む『咳過敏症』」「咳嗽・喀痰の新GL、難治性咳嗽にリフヌアを推奨」)

咳が長引いても4割超が医療機関を受診せず

 CHSの主な原因は、求心性知覚神経の過敏状態や中枢神経系の機能異常とされ、乾燥、煙や香水のにおい、冷気など通常は反応しないような微細な刺激によって咳が誘発される病態である。今年(2025年)改訂された『咳嗽・喀痰の診療ガイドライン第2版2025』では、治療抵抗性難治性咳嗽(RCC)/原因不明難治性咳嗽(UCC)の背景にあるものとして重要性が強調されている。

 杏林製薬は今回、慢性咳嗽および咳過敏症の啓発を目的として、今年9月11~19日にインターネット調査会社に登録し、1年以内に咳が3週間以上続いた経験がある1万298人(20~69歳、女性39.2%)を対象にアンケートを実施した。

 咳が長引いた際の医療機関の受診状況について、「受診していない」と回答した割合は43.8%(4,510人)だった。その理由として最も多かったのは「咳の症状がひどくないから」(37.1%)で、次いで「日常生活に支障がないから」(35.2%)「市販薬でおさまるから」(16.1%)の順だった。少数意見として「咳で受診していいのか分からないから」(8.8%)、「咳は治らないと思うから」(8.5%)、「どの医療機関を受診すればいいか分からないから」(3.8%)との回答が見られ、一般市民の咳に対する理解が不足している現状も浮き彫りとなった(図1)。

図1.医療機関を受診していない理由

 咳が長引いた際に医療機関を受診した5,788人に対し、医師にどの程度症状を伝えられたかを質問したところ、「十分に伝えられている」と回答した割合は各項目とも2~3割程度にとどまった。

 長引く咳がどの程度つらくなったら医療機関を受診するかを点数化〔0(つらさが全くない)~10(耐えられないほどつらい)〕してもらったところ、最も多かったのが「7」(20.7%)で、「8」以上は31.9%だった。

「乾いた空気」「冷たい空気」が咳誘因の上位に

 咳過敏症の認知状況については、「知っている・聞いたことがある」との回答は29.1%にとどまった。医療機関の受診の有無別で見ると、「知っている」の割合は、現在も受診中の人で19.5%だったものの、受診したことはあるが今は受診していない人は5.4%受診していない人は2.3%と極めて低かった。受診していない人では「全く知らない」が81.5%を占め、咳過敏症の認知度には、受診経験の有無による著明な差が見られた(図2)。

図2.咳過敏症の認知率(医療機関の受診の有無別)

 咳の誘因については、男女とも「喉のイガイガ」が最多で(順に52.9%、59.0%)「乾いた空気」(同29.3%、45.1%)「煙、または煙っぽい環境」(同24.5%、34.8%)「冷たい空気」(同18.2%、28.7%)「喉の痒み」(同19.4%、24.9%)などが上位を占めた。また、男性と比べ女性で反応しやすい傾向が見られた(図3)。

図3.男女別に見た咳の誘因

(図1~3ともプレスリリースより)

 以上の結果を踏まえ、医学研究所北野病院(大阪市)呼吸器内科主任部長の丸毛聡氏は「咳は体の防御反応の1つだが、長引くと心身に負担が及ぶ。日常生活に支障を来すような場合や気になる症状がある場合は放置せず、医師による診察を受けた上で改善に取り組むことが重要だ」とコメントしている。

(編集部・小暮秀和)

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