〔イベントレポート〕大学の外で医学生に「学びの場」を提供

NexSoM Labo スプリングイベント 2025

  • Facebookでシェアする
  • Medical Tribune公式X Xでシェアする
  • Lineでシェアする
感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ

 大学の垣根を越え、医学生が教員のサポートも受けながら自主的に「社会医学」の学習に取り組んでいる。千葉大学病院次世代医療構想センターセンター長/特任教授の吉村健佑氏と浜松医科大学教授の大磯義一郎氏が共同代表を務める、「次世代社会医学オープンラボ NexSoM Labo」だ。2025年3月29日に東京慈恵会医科大学で学生らによるグループワークと報告会が行われ、その模様を取材した。

コロナ明けを契機に発足

 NexSoM Laboのルーツは、大磯氏が帝京大学で行っていた医学論文を読む学内サークルである。同氏が浜松医科大学に異動したことをきっかけに幅広い大学の学生が参加するようになり、コロナ禍が一段落した2023年、大磯氏が吉村氏に声をかけたことでNexSoM Laboとして組織が立ち上がった。

 両氏以外にも、東京慈恵会医科大学臨床検査医学講座教授の越智小枝氏、帝京大学内科学講座腫瘍内科教授の渡邊清高氏、浜松医科大学地域家庭医療学講座特任教授の井上真智子氏、千葉大学名誉教授の近藤克則氏らが手弁当で参加。昨年夏にオンラインで第1回イベントを開催し、今年が2回目となる。

60368_photo04.jpg

60368_photo01.jpg

4つのテーマで議論、発表

 社会医学とは、臨床医学と異なり、行政、経済、法律、コミュニケーションなど、社会システム全体を対象として医療の在り方を検討する学問である。2回目となる今年度は、学生と講師が医療安全疾病対策ヘルスプロモーション地域医療の4班に分かれ、オンラインも交えたグループワークを複数回にわたり実施。この日、最終報告会が行われた。各班の発表テーマは以下の通り。

・医療安全班:事故調査報告書と遺族向け内容証明文書

・疾病対策班:がん治療の意思決定支援

・ヘルスプロモーション班:フェイクニュース対策

・地域医療班:生産年齢人口減へのアプローチ 

60368_photo02.jpg

60368_photo03.jpg

 学生、講師による投票の結果、最優秀賞に輝いたのはヘルスプロモーション班。ワクチンなどに関するフェイクニュース対策として、①法規制、②メディアリテラシー教育、③SNS対策、④ファクトチェックーの4つについて、過去の実例も踏まえながら社会実装の可能性を検討した。人々の行動変容には②が有用であるものの効果検証が十分に行われていないとし、「今後、ランダム化比較試験(RCT)形式のアンケートなどを行っていきたい」と展望した。

 会の最後には吉村氏が「皆さんが今後臨床医となった際、現場でさまざまな疑問や矛盾にぶつかると思う。その時、社会医学や医療政策が長期的な視点で課題解決を進めていることも忘れないでほしい」とメッセージを発した。

医療は課題山積も、未来は自分次第

 NexSoM Laboの狙いや意義について、大磯氏と吉村氏は次のように話す。

「『学問としての医学はまだまだ捨てたものじゃない』ということを医学生に伝えていきたい。医学生の中には、ともすれば教科書的な知識が重視される既存の医学部の授業に物足りなさを感じている人もいる。そういった学生の受け皿となるとともに、大学組織の垣根を越えて、学問の楽しさを伝えていけたら」(大磯氏)

「主体的な学生が多く、毎回予想以上に熱中して取り組んでくれており、嬉しく感じている。医療・医学をめぐっては課題が多く将来への不安を感じている学生も少なくないが、自身で解決能力を持てば、工夫や努力次第で新たなフィールドを切り開いていけると思う。意欲のある学生にぜひ参加してほしい」(吉村氏)

 学生代表として会の事務局を務めた浜松医科大学の髙木柊哉さんは「他大学の学生と交流ができ、大きな刺激を受けている。今後も相互に高め合えるような環境にしていきたいので、幅広い大学の学生に参加してほしい」と呼びかけた。

(編集部:平山茂樹)

  • Facebookでシェアする
  • Medical Tribune公式X Xでシェアする
  • Lineでシェアする