自己免疫性溶血性貧血へのリツキサン、公知申請で承認

ジアグノグリーンは子宮がんのセンチネルリンパ節同定など追加

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 厚生労働省は、昨日(7月31日)に開催された薬事審議会第一部会において、①抗CD20抗体リツキシマブ(商品名リツキサン点滴静注100mg、500mg)については自己免疫性溶血性貧血、②インドシアニングリーン(同ジアグノグリーン注射用25mg)については子宮頸がん、子宮体がんにおけるセンチネルリンパ節の同定およびリンパ管静脈吻合術に係るリンパ流の評価-の公知申請に関する事前評価を実施。公知申請を行っても差し支えないとして、同日付で保険局医療課長通知(保医発0731第3号)、医薬局医薬品審査管理課長と医薬安全対策課長の連名通知(医薬薬審発0731第1号、医薬安発0731第3号)を発出し、関係各所に周知した。(関連記事「リツキシマブとエルトロンボパグ オラミン、小児の慢性ITPへの用法用量の追加承認を取得」)

リツキシマブ:国内外の有効性、安全性に関する企業見解に基づき判断

 リツキシマブについては、日本血液学会の要望によるもの。公知申請の妥当性について製造販売元の全薬工業は、①海外の臨床試験成績、国内外の教科書、診療ガイドラインと症例報告などから、成人および小児における温式または冷式の自己免疫性溶血性貧血に対するリツキシマブの有効性は期待できる、②温式または冷式の自己免疫性溶血性貧血の治療に十分精通している医師の下で、既承認の効能・効果と同様の適切な安全対策を取った際の安全性は、既知の安全性プロファイルの範囲内と推定できる-旨の企業見解を提出。

 昨年(2024年)3月22日に開催された第58回医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議において、成人および小児の温式または冷式の自己免疫性溶血性貧血に対するリツキシマブの有用性は、医学薬学上公知であると判断された。

 今回の公知申請により、効能・効果として「自己免疫性溶血性貧血」、用法・用量として「通常、リツキシマブ(遺伝子組換え)として1回量375mg/m2を1週間間隔で4回点滴静注する」が追加された。

 なお注意事項として、「診療ガイドラインなどの最新の情報を参考に、本剤の投与が適切と判断される温式または冷式の自己免疫性溶血性貧血患者に使用すること」が追記された。

インドシアニングリーン:適応疾病の重篤性、医療上の有用性などを評価

 インドシアニングリーンの「子宮頸がん、子宮体がんにおけるセンチネルリンパ節の同定」については、日本婦人科腫瘍学会、婦人科がん患者会カトレアの森、リンパ浮腫の患者会リンパスマイルの要望によるもの。まず、①適応疾病の重篤性、②医療上の有用性-の該当性を評価した。

 ①に関しては、子宮体がんおよび子宮頸がんにおいて、診断・治療目的で実施される系統的リンパ節郭清は、術後後遺症による患者の持続的なQOL 低下を引き起こしうることから、適応疾病は「イ 病気の進行が不可逆的で、日常生活に著しい影響を及ぼす疾患」に該当すると判断。

 ②に関しては、センチネルリンパ節生検で病理組織学的に転移のないことが確認されれば、不要な系統的リンパ節郭清を回避する根拠となることや、同薬は北米やオーストラリアで承認されており、欧米の診療ガイドラインにも記載があることから、「ウ 欧米等において標準的療法に位置づけられており、国内外の医療環境の違い等を踏まえても国内における有用性が期待できると考えられる」に該当すると判断された。

 その上で、第Ⅲ相試験などに基づく外国人におけるエビデンスおよび日本人における有効性と安全性の総合評価、効能・効果、用法・用量などについても妥当であり、不足しているエビデンスはないと判断された。

 「リンパ管静脈吻合術に係るリンパ流の評価」については、日本形成外科学会、日本リンパ浮腫治療学会、日本脈管学会の要望によるもの。同様に①適応疾病の重篤性、②医療上の有用性-の該当性を評価した。

 ①に関しては、リンパ管静脈吻合術においてリンパ管の同定・走行確認、吻合部の開存確認ができないと同術を適切に実施できず、リンパ浮腫の進行抑制が困難となり、病期の進行とともに皮膚状態の悪化や合併症が出現し、複合的治療の継続が必須となる。患者の日常生活に著しい影響を及ぼすと考えられることから、「イ 病気の進行が不可逆的で、日常生活に著しい影響を及ぼす疾患」に該当すると判断された。

 ②に関しては、現時点でリンパ管静脈吻合術時におけるリンパ管の同定・走行確認、吻合部の開存確認に係る効能・効果で承認されている医薬品はないことから、「ア 既存の療法が国内にない」に該当すると判断された。

 その上で、国内第Ⅲ相試験、メタ解析、教科書や国内ガイドライン、第Ⅲ相試験などに基づく外国人におけるエビデンスおよび日本人における有効性と安全性の総合評価、効能・効果、用法・用量などについても妥当であり、不足しているエビデンスはないと判断された。

 今回の公知申請により、効能・効果として「子宮頸がん、子宮体がんにおけるセンチネルリンパ節の同定」、「リンパ管静脈吻合術に係るリンパ流の評価」、用法・用量として前者では「子宮頸がんおよび子宮体がんのセンチネルリンパ節の同定においては、インドシアニングリーンとして25mgを20mLの注射用水で溶解し、通常4mLを子宮頸部に適宜分割して投与する」、後者では「インドシアニングリーンとして25mgを10mLの注射用水で溶解し、通常1mLをリンパ管静脈吻合術を行う肢の皮下または皮内に適宜分割して投与する」が追加された。

編集部・関根雄人

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