空気が乾燥する冬季などに使用される加湿器は、加熱式と非加熱式に大別される。加熱式の中でもスチーム式や加熱超音波式は、熱湯が発生するため熱傷の危険性がある。日本小児科学会は、スチーム式加湿器により右第3指、第4指に熱傷を負った1歳1カ月女児の事例についてInjury Alert(傷害速報)類似事例を発表。設置場所や高温の蒸気/熱湯が発生しない加湿器を選択するなどの予防策を講じるよう求めている。(関連記事「光るコースターの内部液で化学性肺炎に」) タンク内に手を入れ熱傷 事例は、2025年1月X日の午後9時ごろ、自宅寝室で兄と遊んでいた1歳1カ月女児。両親は10mほど離れた別室におり、女児が啼泣したため駆け付けるとスチーム式加湿器タンク内の水が加熱された状態で蓋が開いていた。兄によると「蓋を開けたところ、女児が手を中に入れた」とのこと。女児の右手に触れると泣いたため、明らかな外観の異常はなかったものの熱傷を疑い、覚知から約5分後に30秒ほど流水で冷却、午後10時に救急外来を受診した。 スチーム式加湿器は電源を切って床に置いてあり、スイッチにはチャイルドロック機能が付いていた。だが、女児の受傷時にチャイルドロック機能は使用されておらず、状況から兄が加熱ボタンを押したと考えられた。 蓋はロックしていたが、チャイルドロックは効かない仕様であり、幼児でも開けることができる高さ(約30cm)だった。製品は給湯ポットに類似し、蓋を開けるとタンク内に湯がたまっている構造だった(図)。 図.製品のイラスト (日本小児科学会発表資料より) 表皮剝離を認めるも、その後に軽快 救急外来受診時、外表上の明らかな所見はなかったが、右手の指に触れると啼泣したため翌日再診とした。X+1日の再診時、右第4指先端尺側5mm×8mmの範囲が白色に変色していたが、びらんはなかった。第3指には所見がなかったことから処置は行わず、自宅で経過観察の方針とした。 X+4日ごろまでは入浴時、患部に湯が触れると啼泣していたが、その後軽快。X+6日ごろより、右第3指、第4指に先端から厚く表皮剝離を認めた。 X+15日の再診時には、剝離した表皮の下に正常上皮の形成を認めた。その後も皮膚欠損や色素脱失、痺れの残存などなく軽快した。 スチーム式加湿器をめぐっては、2020年9月に発表された加湿器内の熱湯流出による熱傷事例の他、発生する蒸気による熱傷なども傷害速報類似事例として発表されている。子供の手が届かない場所への設置に加え、高温の蒸気や熱湯が発生しない加湿器を推奨する海外の報告に触れた上で、日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会は「熱傷を受傷しにくい機器を選択することも予防の1つだ」と注意喚起している。 (編集部・小暮秀和)