日本では人口の高齢化に伴い入院患者も高齢化が進み、院内での転倒事故が増えている。入院患者の転倒は、骨折および外傷、不安や抑うつ、身体活動の制限、入院期間の延長に関連する医療費の増大などを引き起こし、医療現場における深刻な問題となっている。入院中の単調な生活による概日リズム(サーカディアンリズム)の乱れは、転倒の一因と考えられるが、その対策として近年、病院や高齢者施設などでは時間帯に応じて照明の明るさや色調を変化させることで、病室内をより自然な光環境に近づける照明器具(サーカディアン照明)の導入が徐々に進んでいる。明石仁十病院(兵庫県)泌尿器科/副院長の沖波武氏らは、サーカディアン照明の導入による入院患者の転倒リスク軽減効果を検討する単施設後ろ向き研究を実施。サーカディアン照明の導入前と比べ、導入後には転倒が半減したとの結果をHealthcare(2025; 13: 1692)に報告した。(関連記事「転倒多いのは男性、入院早期、入眠前後」「『光害』の死亡リスク、死因別に検討」)