ヒトのiPS細胞(人工多能性幹細胞)から顎の骨組織を立体的に再現することに、京都大iPS細胞研究所の研究グループが世界で初めて成功した。マウスに移植したところ、成熟した骨組織が形成され、将来的に再生医療や創薬への応用が期待できるという。論文は7月、国際科学誌ネイチャー・バイオメディカル・エンジニアリング電子版に掲載された。 顎の骨は、全身の骨と発生過程が異なる上、骨の大部分を占める骨細胞のネットワーク構造を再現する技術が不十分だったことから、これまでは再現が難しかったという。 研究グループは、ヒトのiPS細胞を集めて立体的に培養し、顎の骨細胞のもととなる細胞群を作製。培養を進めたところ、米粒状の白い塊(直径1.0~1.5ミリ)が形成され、内部で石灰化が起きていることを確認した。 さらに、マウスの下顎に穴を開け、ヒトiPS細胞由来の骨組織を移植すると、4週間後には血管が入り込んで穴がふさがれ、通常の移植と同等の骨が形成された。 また、骨がもろくなる骨形成不全症の患者から作製したiPS細胞を培養して病態を再現。同症の原因となる遺伝子変異を修復したiPS細胞からは、正常な骨組織ができることも確認した。 同研究所の本池総太特命助教(歯学)は「歯周病やがんで失われた顎骨の再生医療、疾患モデルを使った治療薬の開発につなげたい」と話している。 (2025年8月19日 時事メディカル)