厚生労働省は昨日(10月22日)付で医薬局医薬安全対策課長通知(医薬安発1022第3号)を発出、添付文書の「使用上の注意」の改訂を指示した。①上皮機能変容薬ルビプロストン(商品名アミティーザ)は「重大な副作用」の項に「アナフィラキシー」を新設、②乾燥組み換え帯状疱疹ワクチン(シングリックス筋注用)は「重大な副反応」の項に「ギラン・バレー症候群」を新設、③閉経期女性のホルモン補充療法(HRT)に用いられる黄胞ホルモン製剤エストラジオール(エストラーナ他)などは「重要な基本的注意」の項に「単剤使用における乳癌に関する注意喚起」に関する記述を追加など-の改訂を指示している。(関連記事「イムデトラ、サイトカイン放出症候群で添文改訂」) ルビプロストン:因果関係が否定できない症例が5例集積 ルビプロストンについては、アナフィラキシー関連症例を評価した。その結果、国内症例が12例(うち医薬品との因果関係が否定できない症例5例)の集積が確認された。死亡例はなかったものの、因果関係評価および専門委員の意見も踏まえて改訂が適切と判断。「副作用」の「重大な副作用」の項に「アナフィラキシー」を新設するよう指示した。 乾燥組み換え帯状疱疹ワクチン:因果関係が否定できない症例が国内外で集積 乾燥組み換え帯状疱疹ワクチンについては、ギラン・バレー症候群症例を評価したところ、国内症例が5例(うち医薬品との因果関係が否定できない症例1例)、海外症例が11例(同4例)集積。いずれも死亡例はなかったものの、因果関係評価および専門委員の意見も踏まえて「重大な副反応」の項に「ギラン・バレー症候群」を新設することが適切と判断した。 HRT製剤:乳がんリスク上昇を否定できず HRT製剤については、①結合型エストロゲンと乳がんの関連を検討した米国のランダム化比較試験Women's Health Initiative(WHI)試験注)では、乳がんリスクの上昇が報告されておらず(JAMA 2006; 295: 1647-1657)、卵胞ホルモン製剤単剤による乳がんリスクの有無は明確でない、②国内外のガイドラインにおいて、HRTが乳がんリスクに及ぼす影響は小さいまたはないとされている、③海外の大規模疫学調査のメタ解析において、腟剤を除く全てのHRTは乳がんリスク上昇と関連しており、使用期間が長いほどリスクが上昇し、過去使用者では投与中止後も過去の投与期間に依存してリスクが持続した(Lancet 2019; 394: 1159-1168、関連記事「閉経後HRT停止10年後も乳がんリスク上昇」)-ことを踏まえ、専門委員の意見を聴取。閉経後女性におけるHRTと乳がんとの因果関係は明らかでないものの、以下の通り改訂することが適切と判断した。 対象となる製剤は以下の通り(商品名) ①「その他の注意」の「臨床使用に基づく情報」の項に「HRTと乳癌の危険性」を新設し、海外疫学調査の結果を追記する ●エストラジオール(エストラーナテープ、ジュリナ錠など、ディビゲル、ル・エストロジェル) ●エストラジオール吉草酸エステル(プロギノン・デポー筋注、ペラニンデポー筋注) ●エストラジオール・酢酸ノルエチステロン(メノエイドコンビパッチ) ●エストラジオール・レボノルゲストレル(ウェールナラ配合錠) ●エストリオール(エストリール錠など、ホーリン錠) ●結合型エストロゲン(プレマリン錠) ●テストステロンエナント酸エステル・エストラジオール吉草酸エステル(プリモジアン・デポー筋注など) ●プロゲステロン(エフメノカプセル) ②①と同様の改訂に加え、現行の「卵胞ホルモン剤投与と乳癌発生との因果関係については未だ明らかではないが、使用期間と相関性があることを示唆する疫学調査の結果が報告されている」を削除する ●エストリオール(エストリール腟錠、ホーリンV腟用錠) 詳細は、厚労省の「医薬安発1022第3号」を参照されたい。 編集部注)WHI試験の終了後解析ではHRT群で浸潤性乳がんリスクの上昇が報告されている(JAMA 2010; 304: 1684-1692、関連記事「WHI試験終了後解析,HRT群で浸潤性乳がんの発症・死亡リスク上昇」)。 (編集部・関根雄人)