「腸換気法」用液体の安全性確認 健康な成人対象に臨床試験―東京科学大・名大〔時事メディカル〕

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 東京科学大の武部貴則教授(大阪大教授兼務)らは27日までに、大腸の血管から酸素を取り込ませる「腸換気法」の第1段階の臨床試験を行い、酸素が非常に多く溶けるフッ素系の液体「パーフルオロデカリン(PFD)」の安全性を確認したと発表した。論文は米医学誌「メッド」電子版に掲載された。

 この研究は急性呼吸窮迫症候群(ARDS)などで肺の血管から酸素を取り込むことが困難になった場合、PFDをかん腸液のように使って酸素を取り込ませる治療法を開発するのが目的。腸から酸素を取り込めるドジョウにヒントを得てブタで効果を確認し、昨年の米イグ・ノーベル賞を受賞した。

 今回の臨床試験は20~45歳の健康な男性27人を対象とし、酸素を溶かし込んでいないPFDを使用した。次の段階では、重症呼吸不全患者に対する治療効果を検証するため、酸素を多く溶かしたPFDを投与し、腸内で分離した酸素がどれだけ血液に取り込まれるかを調べる。

 武部教授は藤井祐・名古屋大医学部付属病院准教授らと共に、被験者にPFDを肛門から投与して1時間後に排せつさせ、血液を検査。投与量は25ミリリットルから1500ミリリットルまで段階的に増やして試験した。その結果、軽い腹痛や腹部の膨満感、便意があったものの、PFD自体が腸管から体内に吸収されないことを確認。肝機能や腎機能なども異常な変化はなかった。

(2025年10月28日 時事メディカル)

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