MASHの発症機序と分子標的

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感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ

シンポジウム2(肝臓学会・消化器病学会)

10月30日 14:30~17:00 第1会場:神戸国際展示場2号館 ホール北

[司会]

楳村 敦詩 氏

京都府立医大大学院・病態分子薬理学

米田 正人 氏

横浜市立大・肝胆膵消化器病学

[演者]

佐藤 雅哉 氏

東京大・消化器内科,東京大附属病院・検査部

上平 祐輔 氏

広島大病院・消化器内科

木村 岳史 氏

信州大・消化器内科

大澤 陽介 氏

国際医療福祉大病院・消化器内科

河野 寛 氏

山梨大・1外科

美野 正彰 氏

国立国府台医療センター・消化器・肝臓内科

中村 徹 氏

久留米大・消化器内科,久留米大先端癌治療研究センター・肝癌部門

蔵野 宗太郎 氏

熊本大・消化器内科

福本 賢二 氏

大阪大大学院・消化器内科学

[特別発言]

中川 勇人 氏

三重大大学院・消化器内科学

楳村 敦詩 氏

米田 正人 氏

 代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)の発症メカニズムを多角的に検討した本セッションでは、脂質・糖代謝の破綻や慢性炎症、線維化進展といった病態形成に関する分子機序が、基礎・臨床双方から報告された。診断・治療標的の探索にとどまらず、MASHを通して代謝関連疾患全体を俯瞰する試みとしても注目された。

MASHの病態・診断・治療の多角的な探求の成果を発表

 佐藤雅哉氏は、日常診療で取得可能な臨床データを活用し、進行リスクを有するat-risk MASHを予測する機械学習モデルを構築。年齢、BMI、血液学的パラメータなどを変数としたランダムフォレスト解析を用い、FIB-4やFASTスコアと同等以上の識別性能を示した。今後、簡易的なMASHリスク評価ツールとしての応用が期待されるとした。

 上平祐輔氏は、代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)患者におけるGIP/GLP-1受容体作動薬チルゼパチドの肝障害改善効果を自施設で後ろ向きに検討。体重減少効果と独立してALT値が有意に低下したとし、薬剤の直接的な肝保護作用を示唆した。肥満・糖尿病治療薬としての使用経験が肝疾患管理にも寄与しうることを報告した。

 木村岳史氏は、データ駆動型クラスタリング解析によりMASLD患者の病態を層別化し、高リスク群の特徴の解明を試みた。同氏は、血清IgA値上昇を特徴とする高リスクサブタイプを同定。腸管と肝臓由来のIgAを介した免疫活性化が線維化を促進し、疾患進展に関与していると考察した。

 大澤陽介氏は、MASHの進行機序において、脂質メディエータに着目した。肝線維化に影響を及ぼす脂質メディエータを、コリン欠乏食MASHモデルマウスおよび遺伝子欠損マウスを用いて探索。肝組織内のスフィンゴシン-1-リン酸(S1P)が肝類洞内皮細胞で産生され、S1P受容体2を介して星細胞を活性化し、肝線維化を誘導することを明らかにした。

 河野寛氏は、中鎖脂肪酸(MCT)によるMASH肝発がんおよびMCT投与による炎症性肝発がんの抑制効果の検討をテーマとし、自然発症MASHマウスを用いて通常高脂肪食群とMCT置換高脂肪食群を比較した。その結果、MCT群でMASH肝発がんが抑制され、MCTは臓器マクロファージ活性化の抑制と抗炎症作用を有すると考察した。

 美野正彰氏は、ミトコンドリア活性化剤Mitochonic Acid-5(MA-5)による食餌誘導性MASHモデルマウスの病態進行抑制効果について報告。炎症・線維化の進行抑制やミトコンドリア形態異常の改善、肝組織中のATP産生量増加などの病態改善効果が見られ、MA-5がMASHの病態進行を抑制する可能性を示した。

 中村徹氏は、かねてより報告してきたC型非代償性肝硬変患者に対する自家末梢血CD34陽性細胞移植の有効性・安全性について、MASH肝線維化・発がんモデルマウスを用いて検証。肝発がんリスクの増加は認められず、線維化改善、AST・ALT値の有意な低下、AFP陽性肝腫瘍の減少などが見られた。同氏は自家末梢血CD34陽性細胞移植療法の開発に期待を寄せた。

 蔵野宗太郎氏は、B型肝炎モデルマウスにおけるMASHの進展と肝がん発生のメカニズムを検討。高脂肪食の摂取により体重と血清コレステロール値が有意に増加し、肝障害の悪化、肝線維化の促進、肝がんの発生を加速化すると報告した。解析により小胞体ストレスと炎症の亢進が重要な役割を果たすことを明らかにし、炎症が新たな治療標的になると考察した。

 福本賢二氏は、MASHにおける炎症性サイトカインIL-1βの病態進展メカニズムの解明に臨み、IL-1β-IL-1R1に着目。細胞間相互作用によるMASH病態進展について解析を行った。肝マクロファージ由来IL-1βが門脈周囲のヒト肝類洞内皮細胞や肝星細胞のケモカイン誘起を介して炎症細胞浸潤を増加させ、病態進展を引き起こす可能性を報告した。

 最後に特別発言として登壇した中川勇人氏は、心代謝系危険因子(CMRF)とMASLDとの病態予後について検討した自身の研究について言及。脂肪性肝疾患(SLD)の予後を追跡可能なトランスクリプトーム基盤を構築し、危険因子と臨床症状との関連を検討している。肝疾患へのアプローチが全身疾患制御につながる可能性を指摘した。

第68回日本消化器病学会大会

[会長]海野 倫明
東北大学大学院 消化器外科学

第112回日本消化器内視鏡学会総会

[会長]石原 立
大阪国際がんセンター 消化管内科

第30回日本肝臓学会大会

[会長]波多野 悦朗
京都大学大学院 肝胆膵・移植外科

第24回日本消化器外科学会大会

[会長]上野 秀樹
防衛医科大学校 外科

第64回日本消化器がん検診学会大会

[会長]三上 達也
弘前大学大学院 先制医療学

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