虚血性脳卒中患者における神経学的症状のみを 呈する急性大動脈解離の鑑別にD-ダイマーが有用

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 周術期心筋傷害(Periprocedural myocardial injury;PMI)は,心筋バイオマーカー値の上昇により診断され,経皮的冠動脈インターベンション(PCI)後の転帰を悪化させる要因になる。その対策が検討されており,冠動脈プラークの性状評価によりPMIを予測することがまず重要と考えられている。横須賀共済病院(神奈川県横須賀市)循環器センター内科副部長の木村茂樹氏らは,待機的PCIを受けた安定狭心症患者連続193例を後方視的に検討した結果から,PCI前の血管内超音波(IVUS)と光干渉断層法(OCT)による冠動脈プラーク性状評価が,PMIの予測に有用であることをCirc J(2015; 79: 1944-1953)に報告。エコー輝度が減衰するIVUS所見(echo-attenuated plaque;EA),OCTで同定された菲薄化線維性被膜(thin-cap fibro­atheroma;OCT-TCFA)がそれぞれPMI発症と有意に関連しており,この2つの検査法を併用することでPMI予測能が向上するという。


研究者の横顔

金沢大学循環器内科・保健管理センター
吉牟田 剛氏

 吉牟田氏は,1997年に香川医科大学(現,香川大学)を卒業。長崎大学循環器内科において臨床研修後,2002年,国立循環器病研究センターの心臓血管内科レジデント,専門修練医を経て,その後,同センター心臓血管内科,血管科に勤務した2007~11年のデータを今回解析した。当時,血管科では入院患者数が年間約550例あり,大動脈瘤の術前検査やAADに対する集中治療,血管炎や先天性血管疾患,閉塞性末梢動脈疾患,深部静脈血栓症などの静脈疾患の治療などを担当した。血管外科,脳内科,放射線科,救急部との緊密な連携体制があったことが,診療科の垣根を越えた研究の構想につながったという。  


 同氏は,2011年に金沢大学循環器内科に入局,山岸正和教授の指導を受け,今回の論文をまとめた。虚血性脳卒中とAADは,両疾患とも一刻も早く診断し治療することが救命の鍵になる。今回の結果から,AADに起因する虚血性脳卒中か虚血性脳卒中単独かを迅速に鑑別するには血清D-ダイマー値が有用なことが示された。「目の前の患者は麻痺という脳梗塞患者と同じ症状を呈していても,AADであれば,その病態を反映してD-ダイマー値は著明に上昇する。神経学的所見を呈する患者のD-ダイマー値上昇は,AADが強く疑われ,造影全身CTを行うべきことを示唆する」と吉牟田氏。


 同氏の今後のテーマは,血管エコーの普及。「エコー検査は,ベッドサイドで簡便に,頸動脈や腎動脈の動脈硬化,腹部大動脈瘤などを評価できる。日常診療や救急外来でのエコー検査の普及につながる研究に取り組みたい」と抱負を述べている。


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