薬剤師のためのがん治療用語/アジュバント(adjuvant)ってなに?

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用語の意味を把握しよう!

「アジュバント」ってなぁに? (1)、(2)のどちらの意味でしょう。
(1)手術や放射線治療の後に、がんの再発・転移のリスク低下および治癒率向上を目的に行う薬物療法
(2)「恥じらう」の意。フランス語で「また明日(À demain)」と言うつもりが、噛んでしまったことに由来

こたえ:(1)

アジュバントで、治癒率の向上を目指す

 がんのもっとも効果的な治療法は、手術によってがんを除去することです。がんが小さく転移がない、stage IIなど早期がんであれば、手術で治癒も望めます。
 このとき、"再発や転移のリスクを減らし、治癒率を向上させること"を目指し、手術後の補助療法として行われる薬物療法が「アジュバント(adjuvant、術後補助療法)」です。検査ではわからない小さながん(微小転移)が広がっている可能性があり、それを根絶するためです。

薬物療法は目的により3つに大別される

 このほか、手術の前に、がんの縮小を目的に行う「ネオアジュバント(neo-adjuvant、術前補助療法)」という薬物療法があります。
 なお、stage IVなどの進行がんや再発がんなど、手術でがんを除去することが難しい"治癒切除不能のがん"に対する治療では、"延命"が主な目的となります〈表〉
アジュバント、ネオアジュバント、治癒切除不能の進行・再発がんに対する薬物療法、それぞれに第Ⅲ相臨床試験が行われ、安全性・有効性が確立した治療法(レジメン)が用いられます。

表 がん薬物療法、3種類

Advance!! もっと詳しく知りたいあなたへ

 アジュバント、およびネオアジュバントは、全てのがんにおいて治療法が確立しているわけではありません。これは、がんの薬物療法は強力な分、副作用も強いため、場合によってはリスクがベネフィットを上回ることがあるからです。現在までに、効果が期待できるとされているがんは、それぞれ以下の通りです。

アジュバントの効果が期待されるがん
乳がん、結腸がん、子宮頸がん、非小細胞肺がん、卵巣がん、胃がん、Wilms腫瘍、骨肉腫、など

ネオアジュバントの効果が期待されるがん
乳がん、大腸がん、食道がん、膀胱がん、喉頭がん、頭頸部がん、骨肉腫、小児固形がん、など

[PharmaTribune 2012年9月号掲載]

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