【実践編】薬剤師のための健康行動科学/性格タイプ別アプローチ黄色タイプ(外向・直感型)

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国立病院機構京都医療センター臨床研究センター予防医学研究室 岡田浩

 連載の第5回は、「話が止まらない患者さん」に対し、どうアプローチするかがテーマです。前回も書きましたが、人の性格は、意識の方向性と自己決定の傾向から4つの性格タイプに分けることができます〈〉。この分類法は、現在ではコーチングをはじめ、人を相手にする様々な分野で取り入れられています。多様な人の性格をわずか4類型化することに抵抗がある方もいらっしゃると思います。しかし、分類がわずか4つであるから忙しい医療現場でも活用しやすいですし、このように類型化することで無意識に患者さんの性格を注意深く観察するようになります。

図 性格タイプの4つの色

 今回は、「黄色」タイプ(外向・感情型)の患者さんです。このタイプの患者さんの特徴は、話が盛り上がると止まらなくなったり、待合室で隣の方と楽しそうに話しているのですが実は薬局で初めて会った人だったりすることです。

前回取り上げた「赤色」タイプの患者さんが苦手な方は多いと思います。「黄色」タイプの患者さんは、苦手ではないものの、時々投薬が長くなって困るな、と感じているかもしれません。今回お示しする方法で、ぜひアプローチしてみてください。

ケース4 話が止まらない患者さん3

60歳代女性。経口糖尿病治療薬のメトグルコ®(250mg×6錠)とアマリール®(0.5mg×1錠)が処方されている。過去の薬歴に「投薬時には、話が長くなりがちなので注意」、「毎日ご近所の友人と公園で30分のウォーキング」、「HbA1c 7.5 ~ 8.0%」、「昼食時のメトグルコ®は外出時は飲み忘れあり」「趣味の手芸の人形をいただきました(待合室の棚)」など、毎回記述がある。

失敗例

NGワード、ピットフォール

「食事や間食を全て毎日ノートに記録するといいですよ!」 「黄色」タイプは、毎日きちんと記録をつけるようなコツコツやる作業は好きではないので、このような提案すると一気にやる気がしぼんでしまいます。人との交流を好むことが多いので、ジムに通ったり、趣味のサークルに入ることでHbA1cが改善した事例などを紹介する方が興味を持ってくれます。

「HbA1cの改善方法として有効な方法が3つあります。1つ目は...、2つ目は...」 「黄色」タイプの患者さんは、人の話を長時間聞くのが苦手なので、複数の項目を説明する場合は、一気に話さずに、1つずつ興味があるのか対話をしながら説明する方が理解してくれます。

では、どう対応すればいいの?

成功例

今回の患者さん・・・「黄色」タイプ  (意識の向きは「外向」 思考の方向は「直感型」)

見分け方

 「黄色」タイプの患者さんは、待合室で待っているときからわかることもあります。例えば、明らかに興味津々な様子で、他の人の投薬を聞いていて頷いていたりします。時には他の患者さんの投薬後に、「さっきの患者さんの時に話していたことなんだけど...」と話が続くようなこともあります。また、薬局の待合室でとても楽しそうにお話ししていらっしゃるので、「お友達ですか?仲がいいんですね~」と話すと、実は初めて薬局で会った人だったりします。

 薬歴を見ると、個人的な情報が多く書かれているのが特徴です。このタイプは自分のことを話すのを嫌がらないことが多いので、薬歴には生活習慣や家族など記録が残っていることも少なくありません。ただ、薬剤師の対応によっては話が長くなりがちなので、「投薬が長くなりがちなので注意」のような記述があるかもしれません。

対応

(1)個人的な情報を話に取り入れる

 「黄色」タイプの方は、自分のことを尋ねられると嬉しくなっていろいろとお話ししてくださいます。そのため、薬局で薬剤師が服薬状況や運動・食事について尋ねると、嫌がらずにお話ししてくれます。

(2)情報量や論理性よりは、感情を込めて話す方が伝わりやすい

 もしあなたが情報を多く説明しようとしたり、「1つ目は...」と論理的な説明を好む薬剤師なら、おそらく「青色」が強い性格タイプですので、斜めの関係にある「黄色」タイプの患者さんとは、意識の方向性と自己決定の傾向も異なるため、少し理解しにくいところがあると思います。

 「黄色」タイプの方は、薬剤師が患者さん個人のことを覚えていたり、話題にしてくれるのを好みます。その一方でデータや数値にはそれほど興味がないので、患者さんには個人的な情報を織り込みながら、データなどは短めに伝えると投薬がスムーズに行きます。

(3)1回の対話が長くならないように気を付ける

 「黄色」タイプの患者さんは、人の話を長く聞くと集中力が切れてしまう人が多いので、1回の話が長くなり過ぎないように、少し話を整理するよう気を付けます。患者さんの話が長くなり過ぎた場合は、「すみません、申し訳ないのですが他の患者さんがお待ちなので...」と話を遮ることも必要になります。

 「緑色」タイプが強い薬剤師だと、話を遮るのが申し訳なくて言えないことが多いようですが、「黄色」タイプの患者さんは話を遮られてもそれほど気にされないので、思い切って短く対話をまとめるようにしても大丈夫です。 

まとめ

  • 「黄色」タイプの患者さんは、話が長くなったり脱線したりするが、薬剤師が遮っても気にされないことが多い。
  • 「黄色」タイプの患者さんは、感情が判断の基準となっているので、理屈よりも気持ちを伝えたり感情を込めるほうが上手くいくことが多い。薬の説明だけでは冷たいと感じるので、個人的な情報なども織り込んでみるとよい。

おわりに

 投薬中に、ご家族のことなど聞いてみると、話が止まらなくなることもあります。ついつい口を挟めず時間が過ぎてしまいがちですが、「黄色」タイプの患者さんの場合は話を遮ってもほとんどの場合、気にされません。「すみません、お待ちの患者さんがいらっしゃるので、また次回教えてくださいね!」などとストレートにお話ししても大丈夫なことが多いです。

参考文献

  1. 岡田浩. 3☆ファーマシストを目指せ!. 東京, じほう, 2013, p65-82.
  2. 坂根直樹. 質問力でみがく保健指導. 東京, 中央法規, 2008, p61-69.

[PharmaTribune 2015年9月号掲載]

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