薬剤師のための皮膚科処方箋/ステロイドと亜鉛華軟膏の重層塗布

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研究所所長(監修)だんの皮フ科クリニック 段野 貴一郎

処方箋からわかることは...?

疾患

  • 亜鉛華軟膏の重層塗布が指示されているので、滲出液を伴う湿潤性病変が考えられる(接触皮膚炎、貨幣状湿疹、虫刺症など)

処方意図

  • 強いステロイドで早く治し、拡大を防ぎたい
  • 亜鉛華軟膏の重層塗布により、滲出液を吸収したい
  • ガーゼ被覆により患部を保護し、掻破を予防したい

マイザー® 軟膏0.05%と亜鉛華軟膏の要点

薬剤:マイザー® 軟膏0.05%

  • 一般名:ジフルプレドナート
  • very strongランクのステロイド外用剤
  • [同ランク品] アンテベート®、ネリゾナ®、リンデロン®-DP など

薬剤:亜鉛華軟膏

  • 白色軟膏に酸化亜鉛20%を含む
  • 皮膚の保護、滲出液の吸収、軽度の消炎作用

用法

1日2回の指示(朝と夜が一般的。湿潤病変は入浴しないよう指示されることが多いので、入浴後に塗布する指導は、ふさわしくありません)

その他のポイント

  • 2種類の外用薬を重ねて塗布し、ガーゼで覆う重層塗布の指示
  • マイザーは直接患部に塗布(ガーゼに延ばすより直接塗るほうが効果的)
  • 亜鉛華軟膏をガーゼに延ばし、マイザーを塗布した上から患部を覆う

患者さんにこうやって伝えよう!

  • ステロイドは、直接患部に塗ってください。炎症とかゆみを抑えます
  • 亜鉛華軟膏は、ガーゼに薄く延ばし、ステロイドを塗った上から患部を覆ってください。じゅくじゅくした湿疹の水分を吸収し、患部を保護します
  • 塗布は、1日2回、行ってください(下記参照)

Dr.Dannoのコレは覚えておきたい!

亜鉛華軟膏の基本
  • 皮膚保護作用、滲出液吸収作用、軽い消炎作用があります
  • 乾燥・亀裂・発赤・浸潤・びらん病変に広く用いられます
  • よだれかぶれ、おむつかぶれなどデリケートなところにも使われます
  • 亜鉛華軟膏は粘稠(ねんちゅう)なので、単独で用いると、拭き取りにくいのが欠点です
  • 白色ワセリン(プロペトなど)で2~3倍に希釈すると、柔らかくなって、拭き取りやすくなります
ステロイドと亜鉛華軟膏の重層塗布※1

※1 重層塗布+ガーゼ被覆を重層貼付と呼ぶ場合もあります

適応

  • 滲出液を伴う湿潤性病変(接触皮膚炎、貨幣状湿疹、虫刺症など)

前処置

湿潤性病変、感染病巣、創傷、熱傷への軟膏塗布の前処置として、消毒薬は用いず、流水または湯ざましでよく洗ってから行うよう指示されることが多いです。
  • 塗布時に患部を洗うのは、汚れを除き、表在細菌数を減少させるためです
  • むやみな消毒は、創面への刺激や接触皮膚炎を誘発し、治癒過程を阻害するおそれがあります※2
  • 入浴の可否は、病変の状況によります。患者さんから質問された時は、担当医に確認しましょう

※2  創傷治癒の初期および感染を伴う創面においては、表在細菌を洗い流し、必要に応じて消毒薬も使います。その後は、漫然と消毒薬を使うことは避け、清潔な湿潤環境を保ち創傷治癒を促します

亜鉛華軟膏を重層塗布するメリットは?

  • 滲出液の吸収作用、消炎作用により治療を支援
  • 外的刺激・掻破からの保護作用、二次感染の予防

亜鉛華軟膏をガーゼに延ばすときのコツ

コツ1 

ガーゼの目に軟膏が入り込むよう薄く延ばします(写真参照)。リント布も使用可

  • 薄く延ばせば患部に軟膏がへばりつきません
  • 患部に残った軟膏はオリーブ油でやさしく拭き取ります(オリーブ油は食用ではなく、薬局で販売しているものを使います)

コツ2
  • 厚く延ばしすぎると、軟膏が病変部に固着し拭き取りにくくなります
  • 拭き取ろうとしてきつく擦ると病変を悪化させます

3/25 17:00 本文を一部修正しました。

前回の「人体の各部位の名称をおさらいしよう!」はこちら

次回の「ステロイドとアズノール軟膏の重層塗布」はこちら

[PharmaTribune 2012年12月号掲載]

監修者 ● 段野貴一郎 日本皮膚科学会認定皮膚科専門医
皮膚科からの患者さんに「このステロイドって強いの?体に悪くない?」と突然相談されて、答えに困ってしまったことはありませんか?ステロイド外用剤による治療は、薬の適切な使用がなにより大切。患者さんに尋ねられた時の薬剤師の対応が、その後の服薬コンプライアンスを左右するといっても過言ではありません。「皮膚科処方箋研究所」では、皮膚科処方箋の読み解き方と外用剤の服薬指導を経験豊富な皮膚科専門医がお教えします。
【略歴】
1975 年 京都大学医学部卒業
1977 年 カリフォルニア大学留学
1984 年 京都大学医学部皮膚科講師
1987 年 天理よろづ相談所病院皮膚科部長
1992 年 滋賀医科大学皮膚科准教授
2008 年 滋賀県栗東市にてだんの皮フ科クリニック」開院

皮膚科の薬剤をもっと学びたい人に・・・

ここがツボ!患者に伝える皮膚外用剤の使い方 改訂2版
著 段野貴一郎(だんの皮フ科クリニック)
B5判・148頁 定価(本体3,400円+税) ISBN978-4-7653-1569-2
http://www.kinpodo-pub.co.jp/shosai/e1811-1569-2.html

保湿剤、ステロイド、免疫抑制外用剤・・・さまざまな処方箋を例に、段野医師が処方意図の読み方と服薬指導のコツを解説します。処方鑑査のポイントや外用剤の製剤特性など、薬剤師であれば知っておきたい外用剤の基礎知識を、わかりやすく紹介。読んだ次の日から実践できる、即戦力の一冊です。

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