薬剤師のための皮膚科処方箋/ステロイドと油脂性保湿剤の混合処方 参考になった 名の医師が参考になったと回答 記事をクリップ 記事をクリップして、あとでマイページから読むことができます Facebookでシェアする Xでシェアする Lineでシェアする 研究所所長(監修)だんの皮フ科クリニック 段野 貴一郎 処方箋からわかることは...? 疾患 かゆみを伴う広範囲の皮脂欠乏性湿疹 処方意図 かゆみを伴う湿疹にステロイドを用いたい湿疹の範囲が広いので、ステロイドを単剤で処方すると使用量が多くなる幼児(2歳)なので、重層塗布が難しい エクラー®軟膏0.3%とプロペト®の要点 薬剤:エクラー®軟膏0.3% 一般名:デプロドンプロピオン酸エステルstrongランクのステロイド外用剤[同ランク品] プロパデルム®軟膏、ボアラ®軟膏 薬剤:プロペト® 油脂性保湿剤[同等品]白色ワセリン 混合指示 (ステロイドと保湿剤)混合の割合は、期待すべき効果、塗布部位、年齢によって決まります おもに抗炎症・止痒効果を期待する場合 → ステロイドの割合・ランクをアップおもに保湿効果を期待する場合 → ステロイドの割合・ランクをダウン皮膚の薄い部位 → ステロイドの割合・ランクをダウン幼小児・高齢者 → ステロイドの割合・ランクをダウン 患者さんにこうやって伝えよう! 油性の保湿剤に、ステロイド軟膏が少量混合されています1日2回、カサカサしてかゆいところ全体に薄く塗ってください Dr.Dannoのコレは覚えておきたい! むやみな混合処方は禁物 混合処方は利便性に優れていますが、同時に多くの欠点を持っています。相性のよくない基剤を混合すると、分離・変質が起こり、薬の効力が低下します。ステロイドの希釈効果(副作用の軽減効果。例えば、2倍に薄めると副作用は半減する)は理屈通りには出てきません 著者は、ステロイド軟膏と保湿剤を処方する際、以下の状況に限り、混合処方をしています 湿疹病変が広範囲で、ステロイドの塗布量が多くなりすぎるとき重層塗布させたいが、その方法(手順)が理解できないとき、または困難なとき幼小児の場合、2種類の薬を塗る間じっとしていないとき 混合処方の適合鑑査 混合処方をする場合は、似通った基剤の外用剤同士が鉄則です。外用剤の基剤は、主剤の作用・浸透性・安定性・pHを考えて調製されているからです。 混合可能な基剤 ・油脂性基剤 + 油脂性基剤 ... ほとんどの場合、混合可(○) 例)ステロイド軟膏 + 白色ワセリンまたはプロペト® ※液滴分散型の軟膏は混合に注意。液滴分散型では薬効成分を基剤中で均等分散させているため、混合により不安定化することがある。液滴分散型の軟膏=フルメタ®軟膏、アルメタ®軟膏、プロトピック®軟膏、ドボネックス®軟膏、オキサロール®軟膏、ボンアルファ®軟膏 ・油脂性基剤 + 油中水型乳剤性基剤 ... 組み合わせによっては、混合許容(△) 例)ステロイド軟膏 + ヒルドイド®ソフト軟膏 ※製品間の相性に注意 混合不可の基剤 ・油脂性基剤 + 水中油型乳剤性基剤 ... 混合不可(×) 例)ステロイド軟膏 + ウレパール®クリームまたはケラチナミンコーワクリーム ※分離・変質が起こり、効力が低下する 混合処方の注意点 混合の可否は個々の製品によって異なるので注意が必要です製品名が"○○軟膏"となっていても、必ずしも油脂性基剤とは限りません混合剤の使用期間は2~4週間が限度です。徐々に変性・汚染の危険が高まるからです薬剤師は混合の不適合がないかを鑑査し、不適切な場合は処方医に照会しましょう 前回の「皮膚科受診患者さんからの質問」はこちら 次回の「腎透析患者の瘙痒治療」はこちら [PharmaTribune 2013年2月号掲載] 監修者 ● 段野貴一郎 日本皮膚科学会認定皮膚科専門医皮膚科からの患者さんに「このステロイドって強いの?体に悪くない?」と突然相談されて、答えに困ってしまったことはありませんか?ステロイド外用剤による治療は、薬の適切な使用がなにより大切。患者さんに尋ねられた時の薬剤師の対応が、その後の服薬コンプライアンスを左右するといっても過言ではありません。「皮膚科処方箋研究所」では、皮膚科処方箋の読み解き方と外用剤の服薬指導を経験豊富な皮膚科専門医がお教えします。【略歴】1975 年 京都大学医学部卒業1977 年 カリフォルニア大学留学1984 年 京都大学医学部皮膚科講師1987 年 天理よろづ相談所病院皮膚科部長1992 年 滋賀医科大学皮膚科准教授2008 年 滋賀県栗東市にてだんの皮フ科クリニック」開院 皮膚科の薬剤をもっと学びたい人に・・・ ここがツボ!患者に伝える皮膚外用剤の使い方 改訂2版著 段野貴一郎(だんの皮フ科クリニック)B5判・148頁 定価(本体3,400円+税) ISBN978-4-7653-1569-2http://www.kinpodo-pub.co.jp/shosai/e1811-1569-2.html 保湿剤、ステロイド、免疫抑制外用剤・・・さまざまな処方箋を例に、段野医師が処方意図の読み方と服薬指導のコツを解説します。処方鑑査のポイントや外用剤の製剤特性など、薬剤師であれば知っておきたい外用剤の基礎知識を、わかりやすく紹介。読んだ次の日から実践できる、即戦力の一冊です。 参考になった 名の医師が参考になったと回答 記事をクリップ 記事をクリップして、あとでマイページから読むことができます Facebookでシェアする Xでシェアする Lineでシェアする ×